電気グルーヴ×スチャダラパー(2)
その時代に思春期を送ったんで
このコラボレーション、こうした〈新しいおじさん〉たちが集まったわけだが、もともとは卓球がSDPに声をかけて始まったという。
BOSE「最初は〈なんかいっしょにやろうよ〉とか言っても、卓球さんが僕らの曲をリミックスしてくれるとか、逆にラップで(自分たちが)参加するとか、そういうイメージはすぐ湧いたけど、それ以上どうするかって別に決めてもなかった」
卓球「基本的に思いつきとその場の勢いでいろいろな活動をやっているんですけど(笑)、今回のやつは、お互いにタイミングも良かったですね。自分たちの活動のなかでもそんな忙しい時期じゃなくて、いっしょにやる余裕もあったし」
BOSE「僕らもアルバム出して、夏に〈WIRE〉の楽屋で会って、それぐらいから〈やろうか〉って言い出したから、僕らの場合は周期的には〈裏〉っていうか、シーズン・オフ(?)だったからやれたっていうのもある」
――働き者ですね!!!
瀧「何を言っているんですか? でも、まりん(砂原良徳)よりは(僕たち)働き者ですよ」
BOSE「だから、最初は〈どうやってやる?〉とかなって、メシ喰いに行って、〈どうする?〉とか話し合って。で、その時卓球さんのスタジオ行って、いろいろレコード見たりして」
卓球「普通にニューウェイヴとかと、あと海援隊とかも聴いたりして。iPodに普通に入ってて、〈何入れてンの?〉とか言ったりして」
ANI「まずはマーズの“Pump Up The Volume”ぐらいから始まって。お互いに好きだからさ。あと、(ゴダイゴの)“モンキー・マジック”とかも」
卓球「ニューウェイヴもダンスっぽいやつですよ。ゴシックとか、そういうのではなくて。ちょうどね、ウチのスタジオのDJブースの下にニューウェイヴ箱があって。そこに普段DJで使わないようなレコードが入っていて(笑)」
――そうして始まった制作。
BOSE「で、卓球さんのスタジオでビートを作るんだけど、最初はそこに集めてあるドラムマシーン触らせてもらったり……〈やっぱり、これ音いいねぇ〉とか言ったりして」
ANI「でもそうやってると、急に〈マイク要る?〉とか訊かれたりとかして」
卓球「こうさ、マイクを奪い合って、ラップするのかな?とかさ(笑)、そう思ったりしていて(笑)。でもね……」
BOSE「ないない……そこまでやらないから(笑)」
ANI「やるわけないって(笑)」
――どうしても80'sの音楽を想起させる要素がこのアルバムには混ざっている。
卓球「80'sみたいなものは、意識しなくてもその時代に思春期を送ったんで、自然と出てしまうっていうか。あと、使っている機材が80年代のものが多いんですよ。だから、それで意識しなくても使っている機材の音でそういうふうに聴こえてしまう」
SHINCO「サンプリングっていうと、80年代も70年代もどこも関係なく音を拾ってこれるけど、今回はサンプリングじゃないんで。あと、やっていることが同じとは言わないけど、(アフリカ・)バンバータの“Planet Rock”とかって、どっちもどっちじゃないですか? (テクノでもありヒップホップでもあるという意:筆者註)そういうどっちもいいな、という音になると、もう関係なくなってくるし。909の音が鳴り出せば、ね……」
卓球「あの時期のドラムマシーンって本当に楽器としての完成度が高いから。それは本当にそう思う」
――では、この2つのグループ、5人の〈聖☆おじさん〉の共通点は何だったのか? それは例えば、昔の漫画であったり、ドラマであったりしたという。そのへんは、本人たちも認める宇川直宏さん監督のプロモ・クリップ“治外法権”を観てもらってもいいかも知れない。
瀧「普通知らないようなところをお互い知っていたり、あのコマ気持ち悪いよね、とか」
卓球「あの頃の80年代ガロ系漫画のすべて、丸尾末広とか全部、あとつげ義春とかもそう。で、〈ゲンセンカン主人〉のあのコマがどうの、とか。普通、そういう会話ありえないでしょ。それから、ANIが見せてくれた、当時のTVを録画したヴィデオ。アニメとか、ドラマとか、そういうの、お互い、全部知ってたから」
1、2、3、“聖☆おじさん”ARE GO!!!