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インタビュー

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捉えどころのないユニットが生み出した、純粋にして革新的なグッド・ミュージック!


 これは一般論なんだけど、25歳を過ぎたあたりから、音楽に熱中できなくなる人が多い。現実社会では音楽が〈娯楽〉として立場の高いものではないことに気付く瞬間が訪れるからなのか、おもしろい音楽が減ってきているからなのか、それともおもしろい音楽を探す能力が減退しているからなのか……。そんなことを考えて悶々としている人にこそ□□□(クチロロ)の新作『ファンファーレ』を差し出したい。ここには、多少いびつながらも、(だからこそ)美しすぎる10曲のポップ・ソングが並んでいる。90年代の〈ジャンクな消費時代〉を経た末に吐き出された、過剰な解説や安易な記号化なんか必要としていない――つまり言い訳が入っていない、ただの〈良い音楽〉だらけのアルバムなのだ。作曲/アレンジ/演奏の大部分を担当する、中心人物の二人に話を訊いた。

「このアルバムは、理屈で作ったわけでもないしコンセプトもない。で、良い曲が並んでいるから説明しづらいんです。でも、ホントに凄いものって説明できないから。聴いた人の頭に違和感や謎が残ればいいと思う」(三浦康嗣)。

「よく誤解されるんだけど、僕らは素直なバンドだと思いますよ。バンド名が変だったり、19曲入りのシングルを出したりしてるから、〈狙ってる〉と思われてるのかもしれないけど、そんなことに頭を使ってはいないし」(南波一海)。

 アルバムには、衒いのないポップスに混じってヒップホップやアイドル歌謡が並ぶ。しかしその混沌のなかにも、彼らの筋の通った〈意思〉がはっきりと見て取れる。

「いまは機材が発達してフレーズのループなんかは簡単に作れるんだけど、今回はどんなミニマルなフレーズでもほぼ全部人間が弾いているんです。ほとんどの人はそれを聴いてもわからない。でもそういうものの積み重ねが大事だと思っているから」(三浦)。

「前と違うのはそういう肉感的なところ。プロデューサーの益子(樹)さんの影響もあるけど、音に説得力があるから装飾がいらなかった」(南波)。

 取材中に何度か感じた彼らの自信の根拠が、そのまま結果として作品には表れている。最後に、もっとも力強くて明確な言葉を引用して締め括りたい。

「目先のことは考えてないんです。50年単位で残らないと音楽をやってる意味がないと思っているから。〈90年代とはじめてさよならしたバンド〉って書いておいてください。いろんな意味で僕らは〈次〉ですよ」(三浦)。
▼□□□の作品を紹介。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2005年11月04日 13:00

更新: 2005年11月04日 16:13

ソース: 『bounce』 270号(2005/10/25)

文/ヤング係長