インタビュー

Valencia


 本国アメリカでは、すでに〈パンク・シーンのネクスト・ビッグ・シング〉と目されているフィラデルフィア出身のヴァレンシア。輸入盤が入荷して以来、ここ日本でも早耳リスナーを中心に話題が沸騰している彼らだが、このたびついにファースト・アルバム『This Could Be A Possibility』の日本盤がリリースされた。

 とびきりメロディックかつエモーショナル、それに加えて曲によってはメタルの影響も聴き取れる彼らの音楽は、まさにイマドキのパンク・ロック。だから、ヒットも頷ける。しかしそれ以前に、楽曲に込められた情熱や、その熱量の大きさが、まずなによりもリスナーの心を鷲掴みにしたのだと考えたい。

「曲に情熱が込められていることはもちろん、俺たちの歌は誰とでも繋がっているんだ。そう、俺たちは人と繋がっていられるバンドになりたいんだよ。俺たちがみんなに歌いかけるのと同じぐらい懸命に、みんなが俺たちに歌い返してくれる・・そんなバンドにね。だから、歌詞では人生におけるいろいろな物語を伝えようとしているんだ。きっとヴァレンシアの曲を聴いた人たちは、そこに自分たちを重ね合わせているんだと思うよ」(シェーン・ヘンダーソン:以下同)。

 彼らがバンドを結成させたのは2004年。シェーンをはじめ、それまでは各々別のバンドで活動していた5人が、同じ目標に邁進できる仲間を求めて集まったことがバンドの始まりだった。そして、改めて音楽に人生を捧げることを誓い合った彼らにいち早く興味を示したのが、ミッドタウンのドラマーとして活躍する傍ら、アイ・サレンダーを経営しているロブ・ヒットだった。

「デモを聴いたロブは夜中の3時に電話してきて(笑)、〈君たちに会いたい! 君たちのアルバムを出したい!〉って言ってくれたんだ。それで、ミッドタウンがフォール・アウト・ボーイといっしょにフィラデルフィアに来た時、ロブに会いに行ったんだよ。ロブからは、〈いかに熱意を持ってバンドに取り組むか、それがバンドの将来を決めるんだ〉ってことを教わった。そして、ロブと俺たちは一丸となって、このバンドに110%の情熱を注ぎ込み、努力することを約束し合ったんだ」。

 シェーンの発言とアルバム・タイトルが物語るように、彼らはいつだって前向きだ。エネルギーに溢れる作品をめざしたという今作をとおして、「人生において設定した目標を達成するために、どんな時でも懸命に努力することの大切さを伝えたかった」とシェーン。

「普段なかなか話すことができない俺の人生についての話を、俺はヴォーカリストとして伝えることができるんだから、それを歌わない手はないだろ? だって、それが音楽の良いところなんだしさ。普段話しにくいことでも、歌にすれば人に伝えることができる。俺は俺自身がそうだったように、自分の殻から一歩踏み出すだけで厳しい状況を切り抜けることができるってことを、みんなに理解してほしいんだ。自分の人生に対して前向きになれない理由なんてどこにもないんだよ。一生懸命がんばればなんでも叶うんだ!」。

 これを青臭いと思うか思わないかは、あなた次第。しかし、誰が何と思おうと、このような情熱こそが彼らの存在をシーンの最前線に押し上げたという事実は変わらないだろう。

「(現在の状況は)ここ2年間の俺たちのハードワークが返済されて、やっと夢が現実になりはじめたって感じだね。もちろん、まだまだめざしているところに達しているわけじゃないけどね(笑)」。

 すでに〈バンブーズル〉や〈ワープト・ツアー〉といったフェスへの出演が決まっているヴァレンシアが、2006年、さらなる飛躍を遂げることは必至だ。

PROFILE

ヴァレンシア
シェーン・ヘンダーソン(ヴォーカル)、ジェイディ・ペリー(ギター)、ブレンダン・ウォーカー(ギター)、ジョージ・チッカーレスク(ベース)、マックス・ソリア(ドラムス)から成る5人組。2004年1月にフィラデルフィアで結成。デモ音源をさまざまなレーベルに送ったところ、アイ・サレンダーを運営しているミッドタウンのロブ・ヒットの耳に留まり契約を結ぶ。その後、フォール・アウト・ボーイやラックス・カレイジャスなどとライヴで共演して徐々に注目を集めていく。2005年10月にアメリカ本国でファースト・アルバム『This Could Be A Possibility』(I Surrender/KICK ROCK INVATION)を発表。このたびその日本盤がリリースされたばかり。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2006年05月11日 18:00

更新: 2006年05月11日 19:19

ソース: 『bounce』 275号(2006/4/25)

文/山口 智男