こんにちは、ゲスト

ショッピングカート

インタビュー

ZZZ


「おもしろいことに、最初から掲げていた最重要ゴールってのが日本で演奏することだったんだ。一度も行ったことはないけど、日本の素晴らしい音楽シーンの話はいつも聞いてるよ。今回のステージは最高の経験になるだろうし、日本のファンの前で演奏するのは楽しみだよ。ファットボーイ・スリムのツアーをサポートするために日本中を回れるなんて、本当にラッキーだと思う」(ダン・シンケル)。

 ロック・デュオでありながら5月に行われるファットボーイ・スリムの来日公演でオープニング・アクトに抜擢されたアムステルダム出身の2人組、ZZZ(ジージージーと読む)。その来日に先駆けてファースト・アルバム『Sound Of The ZZZ』の日本盤がこのたびリリースされることとなった。オルガンとドラムという変則的なバンド形態で見せる、強烈にサイケデリックで刺激的なパフォーマンスが話題を呼び、ヨーロッパを中心に中毒者が続出中! その勢いはアメリカにも飛び火しているという。そんな彼らがバンドの結成秘話を語ってくれた。

「俺たちはルーム・メイトとして知り合ったんだ。正確にはハウス・メイトってところかな。アムステルダムの農場だったよ。俺はいくつかのパンク/スペース・ロック ・バンドで演奏してたんだけど、ダンはクラシック・ギターを勉強していて、かなり多くのジャズ・コンボで演奏していたんだ」(ビョルン・オッテンハイム)。

「そうなんだよ。2000年の秋、ビョルンの父親が古い教会でオルガンを手に入れるまで、俺はオルガンもピアノも経験がなくてね。それで、スリー・ピースのドラム・キットを引っ張り出して、家の地下室で演奏し始めたんだ。その5日後には密輸業者主催のパーティーでギグをやってくれって頼まれたんだよ」(ダン)。

 地下室、密輸業者のパーティー……文字どおりアンダーグラウンド・シーンからの使者である彼ら。暴走ガレージ・ロックを軸に、ドアーズばりにサイケデリックかと思いきや時にオシャレな雰囲気を紡ぎ出すオルガン、そしてエレクトロニックなサウンドが生み出すなんとも不可思議なグルーヴが、聴き手の細胞をひとつひとつ踊らせる。DFA周辺のバンドにも共通するロックとダンスのケミストリーが巻き起こるなかにおいて、もはや彼らの音楽にジャンル分けは無意味なのだ。

「俺たちの音楽をエレクトロ・ポップだと言う人もいれば、ダンス・ミュージックの枠に入れようとする人もいるし、ガレージ・ロックっていうレッテルを貼る人もいる。でも、好きに表現してくれていいんだ。俺たちのサウンドには世界中の音楽要素が入っているし、異なった層のオーディエンスを楽しませることができるっていうのは素晴らしいことだよ。サウンドはかなり広範囲に展開してきたけど、変わらないことが2つあるんだ。それはセクシーさとサイケデリックなタッチだね」(ビョルン)。

 それにしても強烈なオリジナリティーであるが、アムステルダムという街の自由な精神と多文化主義的な側面が彼らの音楽に与えた影響は計り知れない。同地の熱狂的なシーンが彼らを育んできたのだろう。

「アムステルダムには小さいけれどヴィヴィッドなシーンがあるんだ。ガレージ/ローファイ・パンク・ロック、例えばティーン・ジェネレイトやギターウルフみたいなバンドがいるかと思えば、その一方で倉庫のダンス・パーティーに焦点を合わせているヤツもいる。そういうシーンが混然一体となっているんだよ」(ダン)。

 自分たちの最重要ゴールは日本であると語る彼らは、いったいどんなパフォーマンスを私たちに見せてくれるのか。密輸業者のパーティーで一夜にしてスターとなった彼らは、きっとここ日本でもオーディエンスのド肝をブチ抜くことだろう。想像するだけで、今からワクワクしてしまう。

PROFILE

ZZZ
ビョルン・オッテンハイム(ヴォーカル/ドラムス)、ダン・シンケル(オルガン)から成るロック・デュオ。パンク・バンドを組んでいたビョルンとクラシック・ギターを演奏していたダンがルーム・メイトとなったことをきっかけに、2000年アムステルダムで結成。ほどなくして有名な密輸業者が主催するパーティーでライヴ活動をスタートさせる。2003年にエクセルシオールと契約を結び、シングル“Extacy”でデビュー。その後、〈エッセント・アワード〉を受賞するなど、ヨーロッパ全土で知名度を上げていく。2005年にはDMBQと共に全米ツアーを行い、オランダ本国でファースト・アルバム『Sound Of ZZZ』(Excelsior/KSR)を発表。5月3日にその日本盤がリリースされる。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2006年05月18日 17:00

更新: 2006年05月18日 20:44

ソース: 『bounce』 275号(2006/4/25)

文/白神 篤史