こんにちは、ゲスト

ショッピングカート

インタビュー

Be Your Own Pet


〈世界一クールなティーンエイジャーたち〉、メディアが打ち上げたそんなハイプに眉ひとつ動かすことなく、自分たちのパーティーを続ける世界一クールなティーンエイジャーたちが、このビー・ユア・オウン・ペット(以下BYOP)。なにしろファースト・シングル“Damn Damn Leash”をXLから、続くセカンド・シングル“Fire Department”をラフ・トレードからリリースするという快挙を果たし、その勢いに乗って〈サマソニ〉に殴り込みをかけたのも記憶に新しい。そして、ついに待ちに待ったファースト・アルバム『Be Your Own Pet』が到着だ。さぞかし本人たちも気合いが入っているのかと思いきや……。

「曲を書いてレコーディングしただけのことさ。まあ、最初の子供を生んだって感じかな」(ジョナス・ステイン:以下同)。

 なんてあっさりかわしつつ、キッズが生んだキッズなロックンロールがアルバムにはたっぷり15曲詰まってる。チェーンソウを振り回すようなジョナスのギターに、ドコドコとプリミティヴなビートを刻むジャミン・オラールのドラムは、ネイサン・ヴァスケスのベースと共にワイルドなグルーヴを生み出す。そして、そこに女王のように君臨するのが、ジェミナ・パール・アベックのシャウトだ。

 そんな強力なアルバムをスラッとプロデュースしたのは、レッド・クロスのスティーヴ・マクドナルド。バブルガム・パンクの先輩がBYOPにしたいちばんのアドヴァイスとは、〈とにかくレコーディングを楽しむこと〉だったとか。

「レコーディング中はスタジオに友達がたくさん遊びに来てくれたんだ。だから、いつもみんなでハイグレードなジョイントをたっぷり吸ってたよ」。

 どうも本気で楽しんだみたいだけど、キミたち未成年でしょ! いや、もちろん煙たいスタジオのなかでベストを尽くしたわけで、彼らなりに発見はあったようだ。

「朝の8時までスタジオにいなきゃいけない日もあって、それはそれで大変だったけどね。でもレコーディングで曲を細かく分解する作業をとおして、本当にその曲を理解できたと思う」。

 BYOPのサウンドがユニークなのは、そのアイデアと瞬発力だ。思いつきのような奇妙なアレンジと、シンプルなギター・サウンドが合体することで、曲にとてつもないパワーが生まれる。アニマル・コレクティヴやあふりらんぽ(「あふりらんぽはめちゃくちゃロックだよ! いままであんなの観たことも、聴いたこともなかった」)をフェイヴァリットに挙げるところなんて、彼らのユニークなセンスを象徴しているのかもしれない。

「オレたちの曲作りには、決まったプロセスなんてないからね。メンバー全員のアイデアが混ざり合って曲が出来ていくんだ」。

 その良い例が、タイトルからして素晴らしい“Bicycle Bicycle, You Are My Bicycle”だろう。そこにはティーンエイジャーらしい無邪気なコラボレーションがある。

「基本的に歌詞はジャミンが書くことが多いんだけど、この曲はネイサンが思いついたんだ。それからメンバー全員で一枚の紙に歌詞を書いては回し、書いては回しして、この曲が出来上がったのさ」。

 授業中に仲間うちで手紙を回すように、メンバー全員が参加して作り上げた本作。だからこそタイトルもグループ名そのまんま。そこにはなんのプレッシャーもなく、あるのはスプレー缶替わりに楽器を使った、メンバー4人の手あたり次第の落書きだ。

「曲作りのポイント? うーん、とにかく思い切り楽しむことかな」。

 なんて、さっきから楽しんでばっかり。だからこっちも楽しまなきゃ。というわけで、『Be Your Own Pet』、楽しんでますか?

PROFILE

ビー・ユア・オウン・ペット
ジェミナ・パール・アベック(ヴォーカル)、ジョナス・ステイン(ギター)、ネイサン・ヴァスケス(ベース)、ジャミン・オラール(ドラムス)から成る4人組。2003年頃、ナッシュヴィルで結成。ほどなくして、ジャミンの父でミュージシャンのロバート・エリス・オラールが運営するインフィニティ・キャットからシングル“Damn Damn Leash”をリリース。BBCのRADIO1でヒットを記録した同曲は、2004年にXLから再リリースされる。2005年に〈SXSW〉に出演。そこでのステージがラフ・トレード関係者の耳に留まり、同レーベルからセカンド・シングル“Fire Department”をリリース。このたびファースト・アルバム『Be Your Own Pet』(XL/HOSTESS)をリリースしたばかり。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2006年06月22日 19:00

更新: 2006年06月22日 19:30

ソース: 『bounce』 276号(2006/5/25)

文/村尾 泰郎