インタビュー

アンジェラ・アキ

注目のシンガー・ソングライターが初のフル・アルバムをドロップ!優しく、そして熱い歌声とピアノが織り成す『Home』へようこそ!!


「影響を受けたのはスマパン(スマッシング・パンプキンズ)とか、フィオナ・アップル。あと、この前買ったカニエ・ウェストのアルバム(『Late Registration』)は、ここ5年間で聴いたもののなかでもいちばん良かった! 90年代初期はほとんどヒップホップしか聴いてなかったし……。シンガー・ソングライターっていう存在に目覚めたのは大学生の時だったから、それまではあまり興味がなかったんです」。

 ちょっと意外な気もするけれど、彼女にとって初のフル・アルバムとなる『Home』を聴けば、そんな彼女の音楽的な出自についても納得がいくはずだ。大学時代のルームメイトに連れて行かれたサラ・マクラクランのライヴで「音楽が持つパワーを初めて感じて、〈私はこれをするために生まれてきたんだ!〉って思った」彼女が、以後10年の歳月をかけて作り上げた本作には、彼女のシンガー・ソングライターとしての並々ならぬ情熱が詰まっている。

「ひとつ意識したことが〈ピアノと歌のアルバムにしたいな〉っていうこと。CDをプレイして最初に流れるのがピアノの音。そしていちばん最後に流れてくるのもピアノの音、というのはもう決めてました。制作もプリプロからミックス・ダウンの段階まで関わっているから、音像やマイクの位置にも全部自分なりにこだわって……」。

 レコーディングではそのようなこだわりを見せる一方、ライヴは主に弾き語りで、ときには身体ごとピアノに叩き付けんばかりの情感に溢れた演奏をし、歌を紡ぎ出す。

「〈誰かと繋がりたい、どこかに居場所を探したい〉っていうのが幼い頃からのテーマで……。音楽を始めて、街角でライヴをしていくうちに足を止めてくれる人だったり、曲を聴いて〈すごい!〉って言ってくれる人たちに会って、〈ここに私の居場所があるんだ〉って気付いたんです。音楽でみんなと繋がることが私にとっての〈Home〉なんだって」。

“This Love”などのヒット・シングル、アップリフティングかつ大らかな“MUSIC”、そしてアルバムの最後を飾るしっとりとした弾き語りの“Your Love Song”など個々の楽曲はさまざまな表情を見せるが、ひとつの音にあまり言葉を詰め込まず、ピアノの旋律に乗って発せられる彼女のメッセージは、歌詞カードなしでも鮮明に伝わってくる。

「言葉って音とリンクしてるんですよね。言葉だけでは成り立たない、メロディーだけでも成り立たない。そのふたつが合った瞬間にすごいものが生まれるっていうのが私の音楽なんです。決して詩人ではないし、人に提供するようなメロディーを書くような人でもないけど、自分の言葉が自分の音楽と繋がった時は、きっと聴いてくれる人の心を動かすことができるって信じてる」。

 彼女にとって音楽とは本当に切実な存在なのだろう。容姿やキャラクターが先行しようと、彼女の音楽に対する真摯な姿勢こそが、楽曲にジャンルレスな魅力を与え、多くの人々の心を揺さぶる原動力となっているに違いない。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2006年06月29日 23:00

ソース: 『bounce』 277号(2006/6/25)

文/牛島 絢也

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