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インタビュー

インディア・アリー

人生について、人間関係について……いっそう純度を高めたインディアのソウルは優しく歌いかける


 前作『Voyage To India.』から3年、US女性アコースティック・ソウル・シーンの頂点に立つインディア・アリーが戻ってきた。近年はグラミーをはじめとする各賞レースの常連であり、昨年は御大スティーヴィー・ワンダー『A Time 2 Love』の大トリを飾るタイトル曲で共演を果たすなど、デビュー5年目にして(そう、たったの5年!)若手実力派アーティストとしての王道を着実に歩み続けるインディア。待望のサード・アルバム『Testimony : Vol. 1, Life & Relationship』は初めての試みとなる連作シリーズものの第1章。音楽性だけでなく聡明なる知性の女(ひと)でもある彼女のこと、そこには確固たる信念があったという。

「アルバムを作る理由ならいつも同じよ。私の真実を語り、音と言葉の持つ力によって愛と癒しをもたらすこと。連作にした意図は、ありすぎる楽曲をきちんと体系づけて整理したかった、ということね。一度にまったく異なる方向性を持った物事を考えることはできるけれど、それを客観的に作品として見た時に、偽善とまでは言わないまでも、ちぐはぐな印象になってしまうかもしれないじゃない? だからこの3年間に書き溜めてきたすべての曲を4つのカテゴリーに分けて、まず1作目は〈人生〉と〈人間関係〉をテーマにした曲をまとめて発表することにしたの(なお、第2章となる次作のタイトルは『Testimony : Vol. 2, Love & Politics』だそう)。そのカテゴリー同士は必ずしも呼応するものじゃないかもしれないけれど、相反しない組み合わせにしたつもり。実はこのアイデアを提案してくれたのはミュージック・ソウルチャイルドなの。彼は私と違って、とても論理的な人だから」。

 先行シングル“I Am Not My Hair”はドレッド・ロックスを切り落とした彼女の新しいイメージと相まって話題を呼んだ。曲中で何度も〈私はアナタの期待どおりなんかじゃない〉と訴える彼女、これまでのコンシャスで繊細な優等生的イメージが窮屈になった?

「むしろ、いまの私が人生のなかでどういう状況にいるのか、私に興味を持ってくれている人にそれを過不足なく伝えたかった、というか。いままでの私はロマンティックで理想主義的なことばかり歌ってきたわ。だけどこのアルバムの制作中に大失恋して、挫折や失望や怒りを感じるような経験をしたの。だから髪を切ったのかって? そうじゃなくて、新しい人生のステージの幕開けを期待して。私の周りでいろんなことが変化していたんだけど、髪を切ってさらにそれに勢いをつけたい、というのはあったわ。『Acoustic Soul』からはもうずいぶん時間が経っているし、ファン心理として、好きなアーティストにデビュー当時のままでいてほしいと願うのはわかるんだけど、誰もが成長して考え方が変わるように、私だって生身の人間だから。変化しないことを望むのは不自然だわ、だって人間は変化する生き物でしょう? 人が思う〈インディア・アリー像〉を故意に打ち砕くような真似をするつもりはないけれど、それに忠実であろうとするあまりに自分の感情や表現を曲げるつもりもないわ」。

 デビュー作を「手探り状態」、前作を「グラミー賞の締切を意識しすぎた不完全燃焼なアルバム」とまで言い切る彼女。持ち前の知性がもたらす聡明な物言いに加え、数々のアワード受賞でその芸術性を認められたことへの自信、そして何といっても失恋の痛手(ちなみにお相手についての話はNGだった)……これで一人前のオンナとしての肝が座らなかったらウソだろう。現在進行形のインディアをキャッチせよ!
▼インディア・アリーのアルバム。

▼『Testimony : Vol. 1, Life & Relationship』に参加したアーティストの作品を一部紹介。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2006年07月20日 01:00

更新: 2006年07月20日 19:25

ソース: 『bounce』 277号(2006/6/25)

文/渡辺 深雪