TAPES 'N TAPES
ミネアポリスから現れて、大西洋の両岸で話題騒然! XLが送り出した今年最強のダークホース、のんびり顔だけど音はヤバイぜ!!
「本当にこのレーベルと契約できたことを光栄に思うよ。最高のレーベルだからね!」と、みずからの所属レーベルについて熱っぽく語ってくれたのは、テープス・エン・テープスのフロントマンのジョシュ(ヴォーカル/ギター:以下同)。英米の音楽好きブロガーたちからたくさんの支持を獲得し、かの〈myspace.com〉ではアークティック・モンキーズに続いて、インディー・バンド人気投票の堂々1位を獲得した彼らは、XLとの契約を選んだ。他にも有名レーベルからの誘いがあったようだけど、なぜXLに?
「良いレーベルの条件は、〈アーティストの考えをどれだけ理解し、最大限に高められるか〉ということと〈ビジネス・センスはあるか〉ということだと思う。特に僕たちの目的は良い音楽を作ることであって、プロモーションやマーケティング戦略なんて絶対できないしさ。皆がアリーナでライヴをするようなスーパースターになるのが理想ではないわけで、もっとアンダーグラウンドに活動したいと考えるアーティストもいる。アーティストがどんなヴィジョンを持っているのかを理解することが大事だと思うね。XLはすべてにおいて理想的だよ」。
そんな彼らの、自己紹介も兼ねたバンド結成の経緯を訊いてみた。
「いま僕は26歳で、キーボードのマットと2人でこのバンドを始めたんだ。彼は以前トロンボーンをやってたんだけど、僕はベースを弾ける人が欲しくて、友達だった彼にお願いして。ベースとピクシーズの『Doolittle』を買ってそれを教材にして覚えたんだ(笑)。ドラムスのジェレミーは20歳になったばかり。ベースのエリックは確か32歳か33歳だと思うんだけど……でも、来日する時には確実に33歳になってるから(笑)」。
そう、12月には早くも来日が決定している彼ら。しかしその特殊な音楽性とパフォーマンスに、日本のロック・ファンは必ず腰を抜かすだろう。このたびリリースされたファースト・アルバム『The Loon』は、90年代初期のUSオルタナを基調としながら、カントリーやブルースに、初期エモのギクシャク加減、さらにはキャプテン・ビーフハートのようなサイケ風味が、まったりしたローファイ感のなかを無理なく自然に漂い、聴き込むごとに深みにズブズブとハマってしまう。こんなにも新しくて楽しい音楽を生み出すのに、いったいどのようなアーティストから影響を受けてきたのだろうか。
「メンバーみんなが共通して好きなのはレディオヘッド! 超尊敬しているよ」。
そのレディオヘッドのトム・ヨークとはレーベルメイトだけど、交流は?
「え~と……実はレーベル内のアーティストとはまだ会ってないかな。だってみんなスゴいバンドばっかりなんだもん(笑)! でも、もしトム・ヨークに会える機会があったら挨拶しにいく! そんなチャンスは逃したらダメだよね! M.I.A.とかジャック・ホワイト(ホワイト・ストライプス)も同じレーベルにいるけど、もともと性格的に積極的なタイプではないし、自分が尊敬するアーティストにアプローチするのは勇気がいるよ。そのうち慣れてできるようになるかなあ(笑)」。
ライヴでは、洗練とは程遠い、奇妙な演劇テイストを盛り込んでいるという噂もあるが……。
「ええ~!? それはただの噂だよ~。マットは時々ステージ上でクレイジーなことをするけどね。そういえば最近調子に乗りすぎてシンバルを壊したな。とにかくわかりやすい、ノリの良いライヴだよ! エネルギッシュっていう意味ではスゴいと思う。マットは日を増すごとにヤバくなってきてる(笑)。僕とエリックも飛び跳ねたりするけどリズムがズレるから途中であきらめちゃうんだ」。
今年のXLのルーキーは怪物か!?とも噂されているが、このナチュラルな佇まいは何だろう。来日ライヴを観逃したら一生後悔が残りそうだ。
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カテゴリ : インタビューファイル
掲載: 2006年11月16日 17:00
更新: 2006年11月16日 22:01
ソース: 『bounce』 281号(2006/10/25)
文/冨田 明宏