TAPES 'N TAPES(2)
シティ・ビートを前身とするUKの老舗インディー・レーベル=XLのスタートは、アシッド・ハウス~レイヴの華やかなりし89年。当初はハードコアなレイヴ・サウンドを看板に活動を開始し、プロディジーのブレイクで世界的なレーベルへと成長した。その後はベースメント・ジャックスもヒットさせてダンス・ブランドとしての評価を確かなものにしていくが、2000年前後から、バッドリー・ドローン・ボーイやアヴァランチーズらと次々に契約して、エッジーで個性的なスタンスを改めて明確化。以降もホワイト・ストライプスやディジー・ラスカル、M.I.A.、デヴェンドラ・バンハートといった先鋭的な顔ぶれを送り出し、今回のテープス・エン・テープスとヴァリアスに至るわけだ。ここでは近年のリリースを振り返ることで、XLの歩みを確認してみよう。(bounce編集部)
BADLY DRAWN BOY『One Plus One Is One』 Twisted Nerve(2004)
マンチェスターが誇る最高の美メロ・ポップ職人にして黄昏の飲んだくれシンガーであるBDBことデーモン・ゴフもデビュー・アルバムからずっとXL所属だったが、内省的な本作を残して最新作ではついにEMIへ移籍。(北爪)
DIZZEE RASCAL『Showtime』(2004)
レーベル買いに値する安定した大手ブランドとなっていた2000年代初頭のXLだが、その進取の気性とセンスの良さを改めてアピールしたのは、この若きMCとの契約だった。2枚目となる今作はグライムの流行に先鞭を付けることに。(出嶌)
THE PRODIGY『Always Outnumbered, Never Outgunned』(2004)
XLが大躍進を果たした90年代、その駆動輪となったのは、間違いなく彼らだ。8年ぶりに登場した今作でもパワフルな90年代マナーをゴリ押し。ベスト盤を挿んでの次作では、いよいよメジャーへと送り出されるとの噂も。(出嶌)
WILEY『Treddin' On Thin Ice』 Roll Deep(2004)
ディジー・ラスカルを輩出したロール・ディープのボスキャラ、ワイリーもXL経由でソロ・デビュー。ハードなストリート・マナーを聴かせる今作が叩き出した確かな成果は、翌年のメジャー・デビューへと繋がっていく。(出嶌)
DEVENDRA BANHART『Cripple Crow』(2005)
軽やかに木霊を使役する深山幽谷系アコースティック詩人。ネオ・アシッド・フォークの中核ともいうべき彼の作品が、長年クラブ・カルチャーに貢献してきたXLからリリースされたという事実の持つ意味はデカイ。(北爪)
YOUNG HEART ATTACK『Mouthful Of Love』(2004)
ホワイト・ストライプスをはじめ、実はブルージーで骨太なバンドもいるXL。その流れとはちょっとズレるが、ヤングなハートでアタックな彼らもダットサンズやキングス・オブ・レオンに続く大道ロックンロール・バンドの新鋭! レーベルの新たなイメージを作った一枚。(白神)
M.I.A.『Arular』(2005)
紛争のスリランカに生まれ、現在はロンドン在住の個性派シンガーによるデビュー作。暴力や紛争への怒りという強烈なメッセージをダンスホール・レゲエ調のリズムに乗っけて大ブレイク! この一枚でXLを代表するアーティストになりました。(白神)
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カテゴリ : インタビューファイル
掲載: 2006年11月16日 17:00
更新: 2006年11月16日 22:01
ソース: 『bounce』 281号(2006/10/25)
文/北爪 啓之、白神 篤史、出嶌 孝次