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インタビュー

eksperimentoj

グランジもプログレもすべて呑み込む、貪欲な実験精神に溢れた新世代トリオが登場!!


  筆を替えては色を継ぎ足し、微妙な濃淡や彩りを表現していく。eksperimentojのラウドながらも色彩感に溢れたツイン・ギターは、そんな油絵の行程を思い起こさせる。加えて、知性と野性が同居するようなヴォーカルや観念的な単語が並ぶ英語詞は、どことなくレディオヘッド『Pablo Honey』期のトム・ヨークを思い起こさせるし、起伏に富んだ曲展開はギター・ロックというよりはむしろプログレに近いのかもしれない。それにしても日本人にしてはやけに英語が板についているなぁと思ったら、ヴォーカル/ギターのユージンは10代の後半をアメリカで過ごしたという。ちょうどニルヴァーナをはじめとしたグランジの嵐が全米に吹き荒れていた90年代初頭のことである。

 「それまでも音楽は聴いていたけど、自分の世界観がガラリと変わるほどの衝撃を受けた」とユージン(発言:以下同)が語るとおり、彼の書く曲には絶望や孤独といった人間のダークサイドが描かれている。アメリカから帰国後は美術系の学校へ。そこで出会ったのがもう片方のギタリストであるシモンだ。

「当時は僕もシモンもプロ志向はまったくなくて、このレコードの音を再現するには?とか、こういう音色を重ねるとこうなる、みたいなことばかりやってました」。

 いわば音のエクスペリメント=実験といってもいいが、やがて彼らの研究成果は、〈ギター×2+ドラム-ベース〉という数式で世に示されることに。ライヴではベーシストがいない代わりに、2人合わせてナント40個以上ものエフェクターを使用するというエフェクター・フェチっぷりを披露している。

「あえてベースを抜くことでどれだけその穴を埋められるか。これはもう自分らに課してる永遠の課題みたいなもんですよ(笑)」。

 最小限のシンプルさを狙う他のベースレス・バンドと違い、ギター・バンドの可能性を求めている、というべきか。そして2007年1月24日に満を持してリリースするのが、このデビュー・アルバム『eksperimentoj』だ。全12曲/計74分にも及ぶ大作は、ライヴでこそ発揮される爆発力と陶酔感を意識してか、ほとんどの曲が一発録りでレコーディングされたそうだ。なかには“point at the sky(for Kurt Cobain)”という、まさに自己が辿ってきた道標を示すようなナンバーも。

「自分の根っこにある部分を大切にしながらも、サウンド面ではいろんなアプローチを試してしていきたい」とユージン。ギター・ロックの枠組みをはみ出していく音がここにある。
▼文中に登場するアーティストのアルバムを紹介。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2007年02月01日 21:00

ソース: 『bounce』 283号(2006/12/25)

文/宗像 幸彦