インタビュー

VERMILION SANDS

ハードコアもノイズもジャズも呑み込んだ関西の猛者による、スタイルを越えたダブの姿とは?


 関西アンダーグラウンド・シーンでキャリアを培ってきた猛者たち9人から成るグループ、それがVERMILION SANDSだ。人呼んで〈ハードコア・ダブ・オーケストラ〉。2001年の結成後、ライヴとライヴ盤の発表をメインに活動を続け、「まとめる時が来るまで待っていた」(前川典也、ミックス)という新作『Reverve Overdub』は、アルバムとしては2枚目、スタジオ録音盤としては初のものとなる。まずは彼らを表すキーワードの話をすることにした。〈あの言葉〉を期待しながら……。

「ダブ? いや、人となりじゃない?」(ポルナレフ、スピーチ)。

「そやな」(竹谷郁代、ヴォーカル/パーカッション/クラリネット)。

「音楽スタイルを越えるのは、人かな、って。やる人によって、同じスタイルでも違うというか。僕らがやったら、僕らなりの何かが出るっていうのをめざしているから」(前川)。

 VERMILION SANDSなりの音――それは各々が違ったルーツを持ち、ハードコア、ノイズ、ジャズ、クラウト・ロックといった多様な要素を混ぜ、なおかつダブをアウトラインにして奏でられた(ROVOのエンジニアも務める前川の手腕による)立体的な音だ。その存在感は有無を言わせぬ凄みを放ち、聴く者を圧倒する。スタイルに固執したからではなく、逆に固執しないからこそ滲み出てきた凄みだ。

「(音楽的に)自由でありたいというより、僕らの好きなことを自由に表現できたらイイかな、と。ダブって、音楽の枠を取り外すことじゃないですか? そんな姿勢でこの先もやっていけたらと思う」(前川)。     

 結果として既成のスタイルを壊し続けるこの態度こそが、彼らなりの〈人となり〉を表す意味での、ただの記号ではない新たなるダブの姿なのだろう。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2007年03月08日 15:00

更新: 2007年03月08日 21:04

ソース: 『bounce』 284号(2007/2/25)

文/池田 義昭