インタビュー

THE VIEW


 UKを中心に巻き起こっているダンス・ミュージックとロックの融合は、クラクソンズのアルバム・デビューが決定打となって、ますます加速度を増している。メディアによって〈ニュー・レイヴ〉と括られたこのムーヴメントは、いまやメインストリームをも席巻する勢いであるが、しかしながら今日のUKロック界が活況たる由縁は、これらの〈ニュー・レイヴ〉シーンに属さない多くの個性派アーティストが縦横無尽に活躍しているからだ、とあえて断言したい。ここで紹介するスコットランドのダンディから現れた4人組、ヴューはその代表格。昨年末に初来日を果たし、圧倒的なステージングで観客を虜にした彼らが、ファースト・アルバム『Hats Off To The Buskers』でついに日本デビューを果たした。メンバー全員がオアシスとクラッシュをこよなく愛し、ブームに動じることなく己のスタイルを確立。どうして時代の波に流されずに自分たちの音楽を鳴らせているのか――まずはそのことについて尋ねてみた。

「それは単に良い音楽ばかりを聴いて育ったからじゃないかな。ブームがどうこうっていうのにはあんまり興味がないからわからないけど、ロンドンあたりにいたらそういうのから逃れられないんだろうね。クラクソンズとかが話題になったりしてるけどさ、僕たちはロンドンから遠く離れたダンディに住んでいるから、やっぱり無縁なんだ」(カイル・ファルコナー:以下同)。

 こんなマイペースなスーパー・ルーキーを見い出したのは、リバティーンズやストロークスを発掘したラフ・トレードの元A&Rにして、現在は1965のレーベル・オーナーを務めるジェイムズ・エンデコット。そんな経緯もあってか、今作に詰め込まれた荒々しい青春パンキッシュ・ガレージ・ロックの数々は、リバティーンズの登場時に感じた衝撃とリアリティーを思い出させてくれる。

「リバティーンズとはたびたび比較されるけど、それはすごく良いことだと思ってる。雑誌でそう書かれてるのを読んで、リバティーンズのファンが僕たちを観に来てくれたりするしね! 何より僕たちも好きなバンドだから、比べられるのは全然問題ないよ。僕たちは彼らのサウンドをコピーしてるわけでもないし、それこそ比べられるのは嬉しいことだと思ってる」。

 実際に元リバティーンズのピート・ドハーティさえも彼らに夢中とのことだが、そんな注目バンドに相応しく、このデビュー作ではオアシスやヴァーヴなどを手掛けてきた大御所のオーウェン・モーリスをプロデューサーに起用。そして、そのオーウェン自身が〈オアシスの『Definitely Maybe』以来、最高のデビュー・アルバム!〉と今作を絶賛しているのだ。この言葉にはメンバーもさぞかし喜んだことだろう。

「目標はオアシスだよ。彼らは常に成長し続けてるし、素晴らしい作品を作り続けている。オアシスは僕たちのお手本だと思ってるよ。そもそも僕がギターを手にしたきっかけはオアシスだったしね。目標はオアシスみたいな良いバンドになること!」。

 こんな発言を真顔で言い切ってしまうほど、彼らはどこまでもストレートだ! そんな純粋な気持ちでもって地元を愛し、仲間を愛し、大好きな音楽をただひたすらに鳴らす。急激な環境の変化への戸惑いや不安から自身を見失っていくバンドは多くいるが、ヴューにその心配は無用だろう。最後にカイルは、「メンバー自身がアルバムを通じてオーディエンスにもっとも語りかけたかった大切なこと」を照れながら話してくれた。

「感謝の気持ちを伝えたい。この作品を作ることができたのはたくさんの人たちのおかげだし、アルバムにはそんな感謝の気持ちを込めているんだ」。

 眩いばかりの〈青き衝動〉が詰まったピュアネス・ロックの結晶は、今日も美しく、そしてどこまでも激しい!

PROFILE

ヴュー
キーレン・ウェブスター(ヴォーカル/ベース)、カイル・ファルコナー(ヴォーカル/ギター)、ピーター・ライリー(ギター)、スティーヴン・モリソン(ドラムス)から成る4人組。2004年頃にスコットランドはダンディで結成。地元を中心に精力的なライヴ活動を展開しながら、着実に人気を集めていく。2005年にデモ音源が当時ラフ・トレードのA&Rだったジェイムズ・エンデコットの耳に留まり、ジェイムズが立ち上げた1965と契約。2006年10月にシングル“Superstar Tradesman”でデビュー。2007年1月のファースト・アルバム『Hats Off To The Buskers』(1965/Sony BMG/BMG JAPAN)がUKチャート初登場1位を記録。このたびその日本盤がリリースされたばかり。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2007年03月15日 20:00

更新: 2007年03月15日 20:34

ソース: 『bounce』 284号(2007/2/25)

文/白神 篤史