インタビュー

LOCAL SOUND STYLE

海外のバンドと数々のステージを共にしてきた彼らが初のフル・アルバムをドロップした。〈ジャパエモ〉の枠を余裕で飛び越えるスケール感で、いま世界に羽ばたこうとしている!!


かつては憧れて追いかける対象だった〈洋楽〉を同時代的な〈共鳴〉として奏でるバンドが、ことパンク~エモ・シーンに限って言えば増えてきたような気がする。例えば、青森県は弘前市出身の4人の若者が2004年に東京で結成したLOCAL SOUND STYLE。ゲット・アップ・キッズに刺激されてバンドを始めた彼らは、ダフニ・ラヴズ・ダービーやウェイキング・アッシュランド、ドリーム・ステイト他、これまでに多くの海外バンドと同じステージに立ち、その一方で、海外のオンライン・ショップを通じて自分たちの作品をアメリカでも流通させてきた。

「もともと海外でやりたいという気持ちはあって、じゃあ試しにやってみようってなったんです」(荒関将寛、ヴォーカル/ギター:以下同)。

「いまだに一本一本のライヴを試行錯誤しながらやっている」と語る、まだ若いバンドである彼らが、ひょいと海を越えてしまったところがおもしろい。そこからは〈海外進出〉などと大上段に構えた気負いはこれっぽっちも感じられない。それはやはり、彼らがごく自然なスタンスで海外も日本国内も同じ視野で捉えているからなのだろう。むしろ、〈洋楽/邦楽〉とわざわざ区別しようとしているのは、リスナーの側なのかもしれない。そういう人は、「いい曲が並んでいる、いいアルバムを作りたかった」と語る彼らが、エド・ローズと共に作り上げたファースト・アルバム『Doing It For The Kids』をぜひ聴いてみてほしい。きっと冒頭に書いた同時代的な〈共鳴〉の意味を理解してもらえるはずだ。ここにはゲット・アップ・キッズやジミー・イート・ワールドといったバンドがかつて見ていた、そのまた向こうの景色が映し出されている。

「ゲット・アップ・キッズやヒューストン・コールズなど、エドがプロデュースした作品はどれも音がいい。〈音がいい作品を作るにはどうすればいいんだろう〉と考えた時にエドの名前が出てきて、ダメモトで音源を送ってみたんです(笑)」。

 その結果、今年1月にエド・ローズのプロデュースによるレコーディングが実現。

「とても厳しい人でした。ある意味、鬼です(笑)。でも、そうじゃないと頼んだ意味がない。とにかく音にうるさくて、初日なんてドラムのチューニングに7時間かけたんですよ。それから50回でも100回でも演奏させてベスト・テイクを録ろうとする。プロトゥールスは使っているんですけど、〈切った貼った〉じゃないんです」。

 しかし、その厳しい要求に応えようと、時に鬼プロデューサーを降参させるほどの熱心さでレコーディングに臨んだからこそ、「いい作品になった」と荒関も胸を張る。

「洋楽とか邦楽とか言うよりは、音楽を好きな人に聴いてほしい。僕たちのアルバムが、聴いた人にとって何かのきっかけになってもらえたら嬉しいです」。

 しかし、これは彼らにとって、ほんの一歩にすぎない。

「いい曲を作ることと、いいライヴをやること──その基本を踏まえたうえで、いろいろなところで演奏していきたい。エモと言われていることは知っているけど、それにこだわっているわけではない。エモ・バンドとだけやっているわけではないし、逆にそこにこだわってしまうとやりたいことができなくなってしまうから」。

 もちろん『Do It For The Kids』の海外リリースもすでに視野に入れているという。

「海外のバンドと共演したことでできたコネクションを使って、ヨーロッパやアメリカでのリリースも進めているところです。別に海外でリリースしたからすごいとは思わないけど、自然と結果が出せればいい。そして、アルバムを出せたらツアーにも行きたいですね!」。

▼文中に登場するバンドの2007年作を紹介。

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掲載: 2007年04月05日 18:00

更新: 2007年04月05日 18:06

ソース: 『bounce』 285号(2007/3/25)

文/山口 智男