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インタビュー

akiko × HENRI SALVADOR

akiko ⇔ジャイヴの次はブラジル!! 実力派&人気のシンガーが、かの地で新世代ミュージシャンたちと作り上げたヴィヴィッドな新作『Vida』が到着!!


 今回ブラジルで録音した理由は?という質問をすると、「ブラジルに行きたかったから。それ以外の何ものでもなくて」と笑いながら話したakiko。スタンダード・ジャズのシンガーとしてそのキャリアをスタートし、クラブ・サウンドを通過、大ヒットした前作『LITTLE MISS JAZZ & JIVE』では強く影響を受けたジャイヴに挑んだ。そんな彼女の新作『Vida』は〈ブラジル〉がキーワードでありながら、ブラジルを選択した理由はあまりにもあっけらかんとしている。が、アルバムはそんな動機の軽さも吹っ飛ばすような、豪華ゲスト陣によるオーセンティックかつプログレッシヴな演奏が詰め込まれ、現行のブラジル音楽とakikoのモードがガッチリ組み合わさった末の好結果を見せた。

「ブラジルのミュージシャンは耳の作りが違うんです。日本のスタジオみたいに機材が整っていなくても、自分のプレイを保ちつつ、相手の音の聴きたい部分だけを選んでコミュニケーションができる。私はそういうことができないから、機材面でフラストレーションはあったんですけど、そんなのどうでもよくなっちゃうくらいみんな上手いしグルーヴしている。最初のセッションで〈うおーっ!〉ってアドレナリンが出て(笑)」。

 本作に参加している在ブラジルのアーティストは、カシン、ドメニコ、モレーノといったブラジル音楽を更新する才能から、邦アーティストとの交流も深いパンデイロ奏者のマルコス・スザーノ、ノーウェイヴとブラジル音楽を横断する奇才、アート・リンゼイら。そして、Saigenjiなどを手掛けてきたプロデューサー、GIRA MUNDOがそれらのアーティストをまとめ上げている。

「私がいまのブラジルの状況を知らないから、GIRA MUNDOが必要だったんです。もちろん、彼のスタンスに共感できるところがあるし。あと、今回はアートに参加してもらったのがいちばん嬉しかったですね。これまで彼のことをブラジルと結び付けて考えてはいなかったけど、私の好きなハーバートやコーネリアスなんかと(彼が)いっしょにやっていたから、好きなものが繋がっている感じがして」。

 これまで彼女を紹介する際、必ず付いて回ってきた〈ヴァーヴ初の日本人女性シンガー〉という言葉をみずから開放するように、この作品での彼女の歌唱は大らかで伸びやか、そして何より本人が誰よりも楽しんでいる様子が伝わってくる。

「私は音楽でただ遊びたいだけで、音楽がないと生きていけないとか、音楽で人を幸せにしたいとかいうタイプじゃないんです。今回のブラジルも、私というフィルターをとおして自分のいまのリアリティーを表現したいっていうだけで。好き勝手にやっているように思われるかもしれないけれど、それでも自分の中では一本筋がとおっているんです。みんなちょっと、音楽を硬く捉えすぎだと思います(笑)」。

 アルバム本編のラストを飾る“Yin & Yang”で彼女は、サンバ・マナーのトラックに乗せて人間の成長をポジティヴに歌う。その歌詞のとおり、彼女はこのアルバムによって、ステップを踏むような身軽さで成長を遂げ、自分のリアリティーをより確信的に表現していくはずだ。
(インタヴュー・文/ヤング係長)

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掲載: 2007年05月02日 17:00

更新: 2007年05月02日 17:43

ソース: 『bounce』 286号(2007/4/25)

文/ヤング係長、松山 晋也