インタビュー

Battles

凄腕プレイヤーたちがバトルスという名の下に集結し、ロックを超えたロックの形を鏡に映し出した。さぁ、乱反射する轟音の嵐に、思う存分溺れるがいい!

ふたたびロックを取り戻そう


〈ロックでなければ何でもいい〉──ロック史上に残るワイアーの名言は、その後のシーンに大いなる影響を与え続け、〈ロックを越えたロック・バンド〉を生み出す礎となっている。ロックを越えようとしたバンドは次々に新たなるサウンドを生み出し、現状の音を塗り替えてはその時代ごとにロックを進化させていった。バトルス、このNYを拠点とする4人組インストゥルメンタル・バンドもその系譜に間違いなく存在する。そして興味深いのは、シーンの今後を担い、〈未来のロック〉を奏でる現在進行形のバンドが、越えたはずのロックをふたたび取り返してさらに進化させた点だ。先の名言は、逆説的にロックの凄さを物語る言葉なのかもしれない。

「例えば(アルバムの先行シングルにもなった)“Atlas”は実際に曲を作り出す前にアイデアがあった。ドイツのテクノ・シーンでシェイフ、英語で言うとシャッフルのリズムが流行した時期があったんだ。当時テクノのプロデューサーやDJたちはロック・バーに行ってゲイリー・グリッターやスレイドみたいなシャッフル・ビートが印象的なグラム・ロックを聴いたりしていて、それをテクノに持ち込んだんだよね。そこでジョンが思い付いたアイデアは、〈テクノに持っていかれたシャッフルのビートを、またロックに取り返そう〉っていうもの。つまり、〈シャッフルがテクノを通過してまたロックに戻ってきた時にどんな感じになるんだろう?〉っていうアイデアから生まれたんだ」。

 今回インタヴューに応えてくれた元ドン・キャバレロのイアン・ウィリアムズ(以下同)と、アルト・サックス奏者のアンソニー・ブラクストンを父に持つタイヨンダイ・ブラクストン、そして元リンクスのデイヴ・コノプカという3人の(それぞれ他の楽器も操る)ギタリストによるセッションを経て、元ヘルメットのドラマーであるジョン・スタニアーが参加することでバンドは結成された。「誰がソングライターで、誰がリーダーっていうのがないから、各自のインプットがあったうえでバトルスは成立しているんだ」というこの4人組は、ライヴ活動と3枚のEPを通じて自分たちの音を固めていく。そして、音楽に対する姿勢や音から「未来的で前進している」と感じたワープと契約を交わし、ファースト・アルバム『Mirorred』をリリースした。

「(タイトルについて)自分たちの音楽はループを基本とした音楽で、ループっていうのは何回も音的なイメージを繰り返すことによって生まれてくるものを追求すること。それと同じように、〈Mirorred〉っていうのは、2つの鏡を向け合わすことで生まれる無限の反射のこと。(EPでは全体的にオーガニックな要素を音にもアートワークにも出していたけど)今回はもっと人工的な要素を出したかった。そう、人工的な環境、空間を作りたかったんだ」。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2007年05月10日 16:00

更新: 2007年05月31日 17:37

ソース: 『bounce』 286号(2007/4/25)

文/池田 義昭