インタビュー

Battles(2)

だから、おもしろいものが生まれるんだ

 本作で基本となっているのは、他に類を見ない独自のグルーヴのインストゥルメンタル曲であるが、先の“Atlas”をはじめ新たにヴォーカルをフィーチャーしている曲もある。新しいことに挑戦してもバトルスらしさが失われることはないし、逆にそんな果敢なチャレンジ精神こそが彼ららしいという言い方もできる。では、イアン自身が思うバトルスらしさとは?

「バトルスらしさって基本的なところではコール&レスポンス的な部分、それからいろいろな音楽的エネルギー、散らばった音楽的な要素を4~5分の曲に閉じ込める姿勢、意識。一つの空間の中にいろいろな要素を詰め込んで、各要素のための場所を作ること。昔から一つの声よりもたくさんの声が重なったコーラスに魅力を感じていたし、一つの声だとどうしてもクサくなるっていうか、自分の物語や経験を歌にして、典型的な感情を表現することで皆に共感を求めるような方法はちょっとクサいと思っていて。それよりはもっといろいろな要素が敷き詰められたもののほうが魅力的だし、それがバトルスらしさでもあると思うよ」。

 この言葉どおり、本作にはさまざまな要素が混在している。その結果生み出されたのは、高い技術と発想力、アヴァンギャルドさとポップさ、緻密さとダイナミズムをバランス良く兼ね備えた独自のグルーヴであり、それは打ち込み系のアーティストが生み出しているグルーヴ、要するにバンド・サウンドでは再現不能と思われていたものに近い。

「例えば自分たちのエレクトロニック・ミュージックの作り方っていうのは、一般的な方法と比べると大きく間違っていると思うんだ。でもそれが逆にいいことだと思っていて、たまにエレクトロニック・ミュージックのアーティストのショウを観に行っても、最新のソフトウェアを使って凄く高度なことをパソコンでやっていたりするけど、凄く定義されているっていうか。一つの型にはまってやっていて、観た感じもおもしろさがないし、音も型にはまっているように聴こえてしまうんだよね。僕たちはアンプを8台並べて、デカいドラム・セットがあって……つまりロックンロールのやり方で、オーガニックかつユルい感じで音楽を作っていて、そういうやり方で作ることによって答えが出てくるっていうか、形になっていく方法をとっている。不思議な感じだし、賢いやり方じゃないけど、だからこそおもしろいものが生まれると思うんだ」。

 彼らの生み出すものはどこにも属さないサウンドだが、ある一定のジャンルに属すことにも嫌悪感を抱いていない、というよりもカテゴライズされることに対して意識はしていないという。が、同時にこう付け加える。

「バトルスに対しては皆が違う言葉を探し合うようなバンドでいたいね。例えばカントリーのバンドなら一生カントリーのバンドと呼ばれ続けるだろうけど、バトルスに関してはこれからもさまざまなアプローチを試みて、みんなが〈俺はバトルスってこういうバンドだと思う〉〈いや、僕はこう思う〉って感じで、それぞれに違う言葉で表現されるような存在でありたいんだ。後は自分たちがフレッシュだと感じるものをやり続けるっていうのが、シンプルではあるけど理想だと思うよ」。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2007年05月10日 16:00

更新: 2007年05月31日 17:37

ソース: 『bounce』 286号(2007/4/25)

文/池田 義昭