インタビュー

DIGITALISM

ハンブルグの〈ネクスト・ダフト・パンク〉最右翼がついに正体をあきらかにした。理想主義者のデジタル革命は、もう現実のフロアで大暴れしているぞ!!

フレンチ・アクトと間違われていたよ


 「フランスのイエロー・プロダクションズから出ていた古いレコードで、〈Africanism〉というシリーズがあって、粗削りな感じが好きで昔よくプレイしていたんだ。その後、コンピューターを使ってトラックを作ったりエディットをしたりしはじめたわけだけど、“Idealistic”をリリースする時にその〈Africanism〉をふと思い出したんだ。〈じゃあ僕らの場合はエレクトロでデジタルだからデジタリズムにしようか?〉って……」。

 そのようにユニット名の由来を答えてくれたのは、イスメイル・テュフェクスィとコンビを組むジェンス・モエル(発言:以下同)。現在ドイツのクラブ・ミュージック・シーンで主流となっているのは、コクーンやゲット・フィジカルといった人気レーベルが中心となってフロアへ送り出すミニマル/エレクトロ・ハウス系のクールなサウンドだ。そんななかにあって、ハンブルグのレコード・ショップで知り合ったというデジタリズムは、ニュー・エレクトロ~フレンチ・エレクトロ・シーンの旗手であるキツネが初めてアルバム契約をしたアーティストであり、フランスのニュー・スクールたちからこぞってラヴコールを送られるという現象を起こした。

「僕らは全然ドイツっぽくないし、ドイツの一般的なエレクトロニック・ミュージシャンとはまったく違うと思ってるんだ。ドイツの音楽シーンにとって僕らはあまり重要じゃなかったみたいで、よくフランスのアーティストと間違われたりしていたしね。だからこそキツネが注目してくれたわけだよ。いまのハンブルグはもう一度アイデンティティーを見つけるべきだと思うね」。

 ソウルワックス、グリマーズ、ティーフシュワルツ、ローラン・ガルニエなど多くのアーティストから重宝されてフロアを席巻してきたシングルたち──“Idealistic”に“Zdarlight”“Jupiter Room”のいずれを聴いてもあきらかなように、デジタリズムのサウンドは〈ディストーション・ディスコ〉とも呼ばれるブーストしたブリブリのえげつないシンセ・ベースとドイツ産らしい骨太のハンマー・ビート、さらにエモーショナルでメランコリックな要素を同居させたメロディーを加えたもので、クラブ・シーンとの繋がりが密接になってきた昨今のロック好きをもモッシュ&ダンスさせるエナジーに満ち溢れている。いままさにフランスを飛び出して世界をジャックしようとしているジャスティスやブラック・ストロボ、セバスチャン、UKのシミアン・モバイル・ディスコらと共にダンス・ミュージックとロックの垣根を壊そうとしているのだ。

「彼らとはよく会うし、いっしょに演奏したりもするね。あとはボーイズ・ノイズとかMSTRKRFT、他にもUKのバンドだとか……僕らの共通点はみんな20代半ばくらいの世代で、シーンを盛り上げているってことじゃないかな。弾けた音楽を求めるクラバーたちともほぼ同世代だし、ツアー先でいろんな人と出会えるのは本当に楽しいよ。つい先週末もマイアミでジャスティスといっしょだったんだけど、最高に盛り上がった夜だったね」。

 もうひとつ彼らの人気を決定付けた要因として、数多くのリミックス・ワークも外せないだろう。過去2年間にティガ、クラクソンズ、カット・コピー、フューチャーヘッズ、テスト・アイシクルズ、デペッシュ・モードなどを手掛け、インディー・シーンの重要なリミキサーとして君臨してきたのは衆知の事実。そう、あのダフト・パンク“Technologic”もデジタリズムの手にかかっている。

「あのリミックスはヴァージン・フランスからきた話で、もちろんダフト・パンクが個人的に電話をかけてきたわけじゃないよ(笑)。でも、パーツを貰ってリミックスして、そしたら彼らがOKしてくれて! いままで3度いっしょにプレイしたことがあるけど、凄くいい人たちだよ。特にトーマス(・バンガルテル)の音楽に対するアティテュードが大好きなんだ。話を貰った時はもちろん嬉しかったさ。僕のコレクションのなかには彼らのレコードが全部あるんだけど、そのひとつに自分が手掛けたものがあるなんて最高だよ!」。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2007年05月17日 20:00

ソース: 『bounce』 286号(2007/4/25)

文/青木 正之