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インタビュー

KEN-U(2)

昼よりも夜、ヤードよりもシティー

 「KEN-Uっていうアーティストを知らない人もたくさんいるわけで、これから知ってくれる人にどう聴いてもらえるのかなって考えた時に、まったく新しいことに挑戦するのもアリかもしれないけど、俺の場合は好きなことに対する次の挑戦っていうほうがいいかなって。それで今回は昼よりも夜、ヤードよりもシティーを念頭に置いて、アルバムをひとつのトーンで統一したいなと思った。夜のダンスホールに自分はいて、そういう場所でいろんなものを感じて、いろんな答えを出してここまで進んできたんで、そこにいるのがいちばん自然だし、いたいと思うし、そこにあるトピック以外に考えられなかった」。

 アルバムのなかでも彼の資質の幅広さを知らしめているのが、長渕剛が84年に発表した“TIME GOES AROUND”のカヴァー。中高生の頃から聴いてきたという長渕に対する思い入れと曲に込めたエモーション、楽曲を自分のものにできる歌唱力、そんな名カヴァーに必要な要素が揃った同曲は、作品の中心を飾る一曲とさえいえるだろう。

「歌ってその人の色が強いじゃないですか? ちゃんと自分の歌いたいメロディーが取れる曲を選んだっていうのもあるんですけど、自分の色に変えてみるとこうなるなっていうカヴァーにしたかったから。みんなのイメージする〈長渕剛像〉ってきっとあると思うけど、そのイメージよりも曲が前に出てくる感じがこの“TIME GOES AROUND”にはすごいあるし、伝えたかったこと、思ってたこととフィットしてる部分がやっぱりあったんです。日本のアーティストの中でこの人の曲をいちばん聴いてきたし、この人の考えてることをいちばん考えてみたし、周りにどう見られようといちばん自分が正しいと思うことをやってきてるっていうアティテュードも含めていろいろ教わってきた人」。

 また、『NEXT CRUISING』全体について重ねて訊いてみると、「自分のやりたいこと言いたいこと、これからこうなってほしいとか、このままでは終わらせないとか、普通の人が普通に思うようなことを俺も普通に思っていて。そういうものを自分の身体の中に流れてる音を使って、できる範囲内で限界までやったつもり」と話してくれたKEN-U。彼はさらに続ける。

「ひとつの答えを出してみんなに共感してもらうよりは、俺の問いかけに対してそれぞれ違うことを考えてもらえるようなアルバムを作りました。ファーストよりも自分の好みやワガママが入ってるから、好き嫌いは分かれるかもしれないですね」。

 好き嫌いはあくまで個人の嗜好だが、良い音楽か悪い音楽かは一聴瞭然。ここまで読んでもらえれば、『NEXT CRUISING』にそのどっちが詰まってるかはもう書くまでもないでしょ。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2007年08月30日 11:00

更新: 2007年08月30日 17:29

ソース: 『bounce』 290号(2007/8/25)

文/一ノ木 裕之