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インタビュー

KEN-U

拭い去れない寂しさとか、溢れ出てくる愛しさとか、抑えられないワクワク感とか……
そんな都会の夜に交錯するさまざまな感情を詰め込んで、KEN-Uが次のステージへと歩を進める!

偏ったものを作りたくて


 今年の夏も活況を呈しているジャパニーズ・レゲエ。特にリリース面では一定のキャリアを持つアーティストの寡占状態から、アーティスト/世代の広がりを感じさせるようになってきた。そんなここ最近のシーンにあって、シングル“Doko”と同名のファースト・アルバムがインディーとしては破格のヒットとなったKEN-Uの成功が果たした役割は小さくないだろうし、またそれはリリース経験のない、あるいは少ないダンスホールのアーティストたちに勇気を与える何よりも大きな出来事だったはずである。

 KEN-Uも件のヒットから約2年の間、RACY BULLETで活動を共にするMICKY RICH、DOMINO-KATとENT DEAL LEAGUE名義でファースト・アルバム『DOWN TOWN MOVEMENT』を発表~ツアーを敢行、さらにそのツアーを捉えたライヴDVDをリリースと、まさに勢いを駆って走り抜けてきた感がある。そんななか、ついに彼がソロとして2枚目となるニュー・アルバムを完成させた。メジャー一発目にあたる本作のタイトルは『NEXT CRUISING』。彼は作品に込めた想いをみずからの言葉でこう説明する。

「この前のアルバムは〈こういうこともやって、ああいうこともやって〉っていうのをまんべんなく詰め込んだ感じなんですけど、今回はいろいろある好きなものの中でもちょっと偏ったものを作りたくて。夜の街に何かを探して進んでいく、みんなと同じように進んでいるっていうことをカタチにしたかった」。

「ウチに遊びに行く感覚、そういうノリで作ることのできる、ちゃんと喋れる間柄」という日本/ジャマイカの信頼できるトラックメイカーたちが手掛けたリディムと、NYでのレコーディング&ジャマイカでのミックスという最高の環境、そしてスキットを除いたヴォーカル楽曲ではMICKY RICH、DOMINO-KATの2人のみに絞ったほぼ最小限のフィーチャリング勢 (「アイツらあっての自分なので、いっしょにKEN-Uの曲としてやってもらった」)――それらお膳立てに応えてみせた今作は、メジャーからのリリースに相応しいクォリティーでもってKEN-Uのカラーを打ち出すことに成功した。曲のトピックの面でも前作から大きく舵を切った〈夜のアルバム〉ともいうべき内容は、彼のヴォーカル・スタイルと合わせて成熟を窺わせる男の艶やかさに満ちてる。いやホント、女の子ならずともグッとくるよ、これは。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2007年08月30日 11:00

更新: 2007年08月30日 17:29

ソース: 『bounce』 290号(2007/8/25)

文/一ノ木 裕之