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インタビュー

絶対王政を築き上げたUGKがいまも守り続ける伝統性とは? そして彼らの膨大な外交記録を一部紹介!

 サウス・シーンの顔役として、というよりもヒップホップ界の重鎮的なポジションとして業界随一の支持を得ているUGK。セールス規模で彼らを超える連中はいくらでもいるが、ご意見番としてのプロップは文字どおりキングの名に相応しく、ヒップホップ界でも特殊なポジションにいると言っていいだろう。例えば、バン・Bのソロ・トラック“Draped Up(H-Town Mix)”にカミリオネア、ポール・ウォール、リル・フリップ、スリム・サグ、マイク・ジョーンズら互いにいがみ合う地元の後輩たちが集合させられていたように、派閥やエリアの東西南北やキャリアの長短を問わないフラットな交流ぶりこそが賞賛を集める秘密なのだろう。

 それは何も一朝一夕のものではない。今回の『UGK : Underground Kingz』にて、ローカル・アクトの先達であるトゥー・ショートと共に彼の名曲“Life Is...Too Short”をリメイクしているのは、シーンの様相がNY中心だった頃から活動してきた者同士の連帯感の表れだろうし、そのトラックを制作したのが同じ世代のスカーフェイスだというのも興味深い。“Still Ridin' Dirty”ではそのフェイスの“The Fix(Intro)”をループしているが、このようにローカル産ヒップホップの伝統性を守る行為からも、UGKが狙う〈原点回帰〉の実体を窺い知ることができるのではないだろうか。なお、それ以外にも今回のアルバムには、アーロン・ネヴィル“Hercules”やロニー・リストン・スミス“Bridge Through Time”などのネタ使いが目立つ。一応言っておくと、前者はアラン・トゥーサン作のニューオーリンズ・クラシックであると同時にメイン・ソースが用いた定番ネタだったりするわけで、UGKは二重の意味で伝統を弁えているということだ(その多くがピンプCのプロデュース)。そして、そんな美しい行為をメジャーの舞台で変わらず続けることのできるアーティストなど、ほとんどいないのである。


ロニー・リストン・スミスのベスト盤『Explorations : The Columbia Recordings』(Columbia)

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2007年09月13日 22:00

ソース: 『bounce』 290号(2007/8/25)

文/出嶌 孝次

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