インタビュー

Babyshambles(2)

みんなが一丸となって……

「才能に溢れた優れたミュージシャンとしてピートは記憶されるべきだと思うし、彼はまだ全力を出し切ってないよ。みんな口を開けば、〈リバ、リバ、リバ〉ってとにかくリバティーンズの話ばかりするけど、ピートは28歳の本当に素晴らしいミュージシャンなんだ。だから俺は〈しっかりしてくれよ!〉って感じの演説をぶって、彼にハッパをかけたんだ。そう、いまピートはミュージシャンとして脂が乗り切ってる時期なんだよ」(ミック・ウィズネイル、ギター)。

 新しく加入したミックは、前任者のパトリック・ウォルデン時代からギター・ローディーとしてバンドに随行していた人物。ベイビーシャンブルズの音作りを知り尽くしていると同時に、ピートより10歳年長の彼はさまざまな音楽性とテクニックをバンドに加えた。

「今作はかなり集中して、短期間で全部の作業を行なった。ズバズバと核心を突いていく感じだったね。『Down In Albion』の時は突くべき核心がたくさんありすぎて、空中をあちこちめちゃくちゃに飛び交ってるみたいだったんだよ。それに俺もかなり悪い状態にあったから、そういう状況をうまく制御できなかった。でも今回はちゃんと歌えたし、自分のコントロールの仕方の訓練も積んだ。そしてみんなが一丸となれたんだよね」(ピート)。

 そんなバンドとしての結束力と互いへの大きな信頼感に加えて、プロデュースを手掛けたスティーヴン・ストリートも今作の重要な役割を担っている。スミスや解散後のモリッシー、そしてブラーなど一癖あるミュージシャンと仕事をしてきたからこそ、〈自由すぎる天才〉であるピートの才能をあるべき形にすることができたのだろう。

「スティーヴンとの仕事で俺たちはたくさんのことを学んだと思うよ。誰かと協調し合ってその人を信頼すれば、結果としてこういう作品を完成させられる――このアルバム自体が、そのことを証明しているんじゃないかな」(アダム・フィセク、ドラムス)。

 かつてピートはドキュメンタリーDVD「WHO THE HELL IS PETE DOHERTY?」で、自分の周りすべてに対する不信感を露わにしていた。しかし、この『Shotter's Nation』を聴く限り、いまのピートはバンドという有機体への信頼と、そこから生まれるケミストリーに嬉々として身体と魂を任せているように思える。そしてこのアルバムが生まれたからこそ、ようやく余計な雑音を無視できるかたちで、誰もがベイビーシャンブルズの音楽を楽しめるようになるはずだ。

▼ピート・ドハーティの作品を紹介。

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掲載: 2007年10月18日 22:00

ソース: 『bounce』 291号(2007/9/25)

文/妹沢 奈美