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インタビュー

グディングス・リナ

どこかへ向かって走る電車、窓の外を流れていく街の風景──そんな無常な心象にグディングス・リナの歌と言葉はきっと舞い降りてくる。本物は聴けばわかるよ

意味のある言葉で


  「直接的な自分の感情の吐露というのではなく、私が、私が、というように作ったわけではないんですね。人に〈がんばれよ、がんばれよ〉って言うんじゃなくて、全然関係ない話をしているのに、その人が帰った後に元気になっちゃった!みたいな表現がしたいと思ってるんですね」。

 ロック雑誌「SNOOZER」と「ROLLING STONE JAPAN」それぞれの最新号に、〈日本のロック・ベスト〉150選/100選が掲載されている。日本のロックの規範を作る試みとして大変評価されるべき企画――同時に夢想するのは、日本でのロックの困難さは詞に顕著に現れるのでは? というオハナシ。これは音楽に限ったことではなく、英語詞もしくは日本語詞かどうか? という時代錯誤な質問でもなく、日本語がよく機能する前提条件として(この場合)ロックたることが足枷になる場合にアーティストはどうするか? ということだ。そのように最初から答えられない無理な質問(答えが100万通りもあるだろから)に、グディングス・リナは才能をもって、彼女にしかできない方法でさらりと解答用紙を風に乗せた(このへん、はっぴいえんど調なんでよろしく)。グディングス・リナのニュー・アルバム『大都市を電車はゆく』のことを僕は書いている。

「意味のない言葉で音としておもしろい言葉を並べて歌詞を作る方法ではなく、リアリティーのある名称や単語を使ったり、意味のある文章でそれをやりたいんです。曲は曲で作って、それに詞をつけていくんですが、それには時間がかかりましたね。でも、アレンジはもう曲を作っている時にほとんど決まっています。もっとも、時間が経つと、料理に対してお皿の装飾が変わってくるということはあるでしょうから、いまの時点でのアレンジとは言えるかもしれません」。

 そのタイトルから〈大都市〉〈電車〉、曲を聴いてみれば〈新宿〉〈しごと〉など、みんなが毎日何気なく使っている言葉が詞として巧みに働いている。平易な言葉が重層的な意味を含む時、それは子供だけではなく、すべての世代に愛される音楽になる。

「音楽に救われた経験は大いにある……音楽がなかったら生きているかもわからないし、小さい頃から〈音楽があってよかったな〉と思ったことは何回も何回もあります。やっぱり歌詞の好きな音楽が好きです。スティーヴィー・ワンダーが好きです。すっごい好きって言うと……(少し小さな声で)『The Songs In The Key Of Life』は、音が進歩的だったり、メロディーが素晴らしいだけじゃなくて、どの歌詞もいい」。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2007年12月06日 20:00

ソース: 『bounce』 293号(2007/11/25)

文/荏開津 広