インタビュー

Tristan Prettyman(2)

いまは吹っ切れたわ!

 もちろんダークな一面を見せるだけでなく、従来のようなカラッとした彼女本来の明るい性格を表現した曲もあるが、しかしそういった曲でさえ──例えばエレキ・ギターを駆使したグランジを彷彿とさせるロック・チューン“War Out Of Peace”など──よりドラマティックな展開のあるナンバーに仕上がっている。

「そうね、“War Out Of Peace”のドラム・ループはちょっとニルヴァーナを意識したかもしれないな(笑)。前作のリリース時はまだライヴ経験が浅くて、しかもほぼ一人でアコギ片手にパフォーマンスしていた。だから出せる音もシンプルなものに限定されていた部分があったの。でも、バック・バンドを従えてツアーができたでしょ? そのことでバンド・サウンドの魅力を見い出せたというか、表現の幅が広がったのよ。おかげでハードなロックからレゲエ、ブルースまで、私の大好きな音楽要素をすべて詰め込めたわ」。

 ライヴで鍛え上げたミュージシャンとしてのタフネスと、ロンドンで開花した新たなクリエイティヴィティーを凝縮させた『Hello』。このアルバムのなかでお気に入りの一曲を訊いてみると、彼女は自身のルーツを感じさせるアコースティックなタイトル曲を選んでくれた。

「大好きな人がいるのにどうしようもできない状況について歌った曲なんだけど、結局はこういうアコースティックなナンバーがいちばん自分に合っているって、今回いろいろなタイプの楽曲を歌ってみて実感したの(笑)。でも、どんなことにもオープンマインドな姿勢でトライし続けることは大切。それを続けていくことで、自分の得意とする表現にさらなる磨きを掛けられると思うから。だから今後もいろんな音にトライしたい」。

 ちなみにその“Hello”をはじめ、今回の歌詞には〈報われない愛〉について綴られたものが多い。実際にトリスタンも同じような経験があったのだろうか?

「ええ、相手には大切な人がいて、私はもうどうすることもできない恋愛を経験したわ。いまは〈来世で結ばれたらいい〉って気持ちで吹っ切れたの」。

 うーん、なんとも切ない。
▼トリスタン・プリティマンのフェイヴァリット盤を紹介。

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掲載: 2008年02月28日 16:00

更新: 2008年02月28日 17:10

ソース: 『bounce』 296号(2008/2/25)

文/松永 尚久