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インタビュー

Tristan Prettyman

ハロー、トリスタン! 久しぶり……というよりも、はじめましてのほうがしっくりくるかな? 失恋を乗り越えて見違えるほどキレイになった彼女が、改めて〈自己紹介盤〉を届けてくれたよ!!

私は私なんだから!


 「前作『Twentythree』では〈ジャック・ジョンソンの女性版〉とか〈ジェイソン・ムラーズのガールフレンド(現在は別離)〉と紹介されることが多かったけど、正直そう言われることに少し抵抗を感じていたわ。だって私は私なんだから。でも今回、やっと自分が花開いた気分なの! ミュージシャンとして、自分の世界を表現できた気がする。もし誰かに〈あなたはどんな人物?〉って尋ねられたら、黙ってこのアルバムを差し出せるくらいよ」。

 カリフォルニアの開放的な太陽の下、サーフィンを中心とした日常生活を軽快なアコースティック・ギターに乗せて表現し、一躍ジャック・ジョンソンらと並ぶサーフ・ロック界の象徴的なアーティストとなったトリスタン・プリティマン。しかし2年半ぶりのセカンド・アルバム『Hello』ではその枠組みを越えて、ミュージシャンとして新たな世界に足を踏み入れた彼女の姿を確認することができる。「今回お願いしたプロデューサーが拠点にしている街だったし、以前遊びに行った時に居心地の良さを感じていた」というロンドンでアパートを借り、実際に暮らしながら完成させた一枚だ。

「バスに乗って一人でいろんな場所を探索したりとか、街の空気を身体中に吸い込みながら制作していったわ。おかげで地元にいるようなリラックスした雰囲気でレコーディングすることができたの」。

 その結果生まれたサウンドには、前作のようなカラッとした音色だけでなく、どこかロンドン独特のグレーな風景を閉じ込めたような、メランコリックな側面も目立つ。

「ロンドンだって気持ち良い天気の日もあるのよ。でも、そういう時って外に出てしまうの。だから必然的に曲を作るのが夕方以降だったり、天気がすぐれない日だったり……っていうのもあって、そういう雰囲気が出たのかな。でも、そこには独特の温もりもあると思う。家でブランケットを被っている時のようなね」。

 そんなムードに導き出された楽曲の中でも特に印象的なのが、アルバム終盤に収録されている“In Bloom”だ。トリスタン・サウンドの象徴ともいえるアコギを排除し、ピアノとストリングスだけで構成された壮大なバラード。そこに乗る彼女の歌声も、温もりがありながらどこか哀愁を帯びていて新鮮だ。

「これは雨の日に私が何気なくメロディーを口ずさんでいたら、プロデューサーがピアノで伴奏をつけてくれたことから生まれた曲よ。私はピアノが弾けないからライヴで演奏できないし……昔だったらボツにしてたかもしれないわね。でも、アルバムではアルバムで、ライヴではライヴで表現できることがあるって気付いたの。楽曲っていろんな表情を持つものだということを、この2年半のツアーを通じて知れたのよ。だから、“In Bloom”はアルバムならではの表情を伝える曲ね。私はフィオナ・アップルやトム・ウェイツが大好きなんだけど、『Hello』にはそういうヴァイブがいっぱい入ってるわ。爽やかで、かつムーディな……ね!? あきらかに私の別の一面が出ていると思わない?」。

▼関連盤を紹介。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2008年02月28日 16:00

更新: 2008年02月28日 17:10

ソース: 『bounce』 296号(2008/2/25)

文/松永 尚久