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インタビュー

UNCHAIN

黒人音楽への憧憬を経て見つけた、自身の〈ソウル・ミュージック〉。彼らの歌が等身大の言葉で伝える思いは、きっとあなたに届くはず


  ブラック・ミュージックの豊穣さとパンク・ロックの疾走感を絶妙に融合させ、グルーヴ・ロックの旗手としてシーンに華々しく登場した4人組、UNCHAIN。ファースト・フル・アルバム『rapture』から10か月という短いスパンで届けられたニュー・アルバム『Music is the key』には〈脱皮〉ともいうべき彼らの大きな成長が、しっかりと刻み込まれている。

 AORやフュージョンにも通じる爽やかさを生み出すセンスと軽やかで緻密なバンド・アンサンブルはそのままに、よりいっそう〈歌〉としての魅力が突き詰められた本作。2008年11月から3か月連続でリリースされているシングル曲をはじめ、今回初めて挑戦したという日本語詞の楽曲も多数収録されている。その背景には、真の意味で〈自分たちならではのソウル・ミュージック〉を築き上げることへの強い意志があった。

「ソウルというのは自分自身の言葉じゃないと成立しない気がするんです。だから、翻訳フィルターのいらない日本語で歌うことによって、その時々の気持ちや感情を直接的に伝えたいと思ったんです」(谷川正憲、ヴォーカル/ギター:以下同)。

“All Sincerity”や“Farewell blossom”など、歌謡曲に通じるような泣きのメロディーも彼らにとっての新境地だ。谷川のしなやかなハイトーン・ヴォイスも、かつてなく情熱的に響く。

「子供の頃にはJ-Popを聴いていた時期もあって、実はそれが僕の音楽性に深く関わっている気がします。中学生の頃はX JAPANやLUNA SEA、L'Arc~en~Cielとかをよく聴いていましたし。彼らのメロディーには昔の歌謡曲を思わせるものがたくさんあるし、僕のなかには潜在的にそういうものが染み付いているんだと思います」。

 誰にでも平等に訪れる輝かしい朝を爽快に歌う冒頭の“Good Morning”から、帰る場所の温もりをテーマにしたジャジーなアコースティック・ナンバーのラスト“Places In The Heart”まで、全10曲には日常のなかで感じられる喜びや、大切な人に対する恋しさが綴られている。それが楽曲にキラキラとした輝きを与えたのだ。

「今回は〈伝える〉ということがテーマのひとつとしてあります。人に何かを伝えることって、みんなが当然のように毎日やっていることで、ごくごく日常的なこと。恋人、友人、家族とのどこにでもある何でもない日常。特別なものなんて何もないようでいて、でも本当はすべてが特別なものだと思います。光輝く星を遠い空にではなく、地上に見い出していくような、そういうものにしたかったんです」。

 ブラック・ミュージックに憧れ、ソウルやファンクのスタイルを咀嚼したロック・バンドとして音を鳴らすことから始まったUNCHAINのストーリー。そして辿り着いたのは〈思いを伝える〉という、ごくあたりまえのことだった。

「〈ソウルはアメリカの音楽。ゆえに本物であるためには英語で歌わなくてはならない〉とか、〈あの黒人特有のグルーヴにどれだけ近づけるか〉とか前は思ってましたが、心から何かを信じてそれを飾ることなく吐き出す、偽りのない信念を表現すること、それがソウル・ミュージックなんじゃないかと思うようになりました」。

 ジャンルやスタイルの折衷ではなく、いまの時代の日本にしかない、オリジナルな〈ソウル・ミュージック〉の確立へと向かいはじめたUNCHAIN。その歩みにぜひ注目してほしい。

▼『Music is the key』からの先行シングルを紹介。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2009年01月29日 15:00

更新: 2009年01月29日 18:09

ソース: 『bounce』 306号(2008/12/25)

文/柴 那典

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