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インタビュー

80kidz(3)

自分たちのイメージを限定しない

 その『†』でジャスティスは、それまでに発表してきた〈フロア直行型のエレクトロ〉に混じって、敬愛する中期スパークスやジャクソン・アンド・ヒズ・コンピューター・バンドといった面々に通じる内省的な感触を忍ばせてみせたが、この〈ジャスティス以降〉の流れ――フロアヒットを経てパーソナルな音楽性を開陳する――という方法論は、今回の80kidzの新作『THIS IS MY SHIT』にも当てはまるものかもしれない。

「今回は15曲収録しているけど、それを絞って10曲にする、みたいなことはしたくなかった。2009年までの流れで、80kidzが現時点で辿り着いた音はこれ!っていうのを出したかったから」(Ali&)。

「デジタル・サウンドとアナログ・サウンドの融合をめざしましたね。EPを聴いた人は〈こいつら歌モノは作れないだろう〉って思っているかもしれない。自分自身もイメージに限定しないで、可能性にチャレンジしたいというのもあって歌モノも作りました」(JUN)。

 そんな意図で4つのヴォーカル・トラックを含む15曲入りとなった『THIS IS MY SHIT』は〈80kidzなりのポップ・ミュージック〉がテーマとも言えるだろう。ここでは〈エレクトロ〉マナーを軸にしながら彼らの新しい興味や、ルーツを披露している。フィジェット・ハウスを基点としてレイヴ調に進行するタイトル曲“THIS IS MY SHIT”、オートクラッツの提供したヴォーカルとUKロック調のアレンジが心地良い“She”、MGMT的なニューウェイヴ・アレンジが光る“Frankie”、ユーロ・エレポップの手触りを感じさせる“7inch pop”など。出世曲“Disdrive”のリワークや、フロア直行型の“Yellow Rambler”なども収録しながら、「(リファレンスに)ティガとかターボ、ソウルワックスとかの出音をチェックした」(Ali&)という音像も格段の進歩を遂げ、圧倒的な完成度を誇るアルバムとなっている。また、随所で聴かれるバンド的なダイナミズムも本作の特徴と言えるかもしれない。

「やっぱりバンドをやっていたから、そのフォーマットも意識してライヴをやったりしていきたいです。どの曲も弾ける曲は弾いて」(JUN)。

 セルフ・プロデュースの巧みさ、海外展開を見越した楽曲制作など、個々の経験を背景に圧倒的なスピードで躍進を続ける80kidz。『THIS IS MY SHIT』を先導役に、日本のエレクトロ戦線にもいよいよ若い精鋭が台頭してきそうだ。
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カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2009年05月07日 16:00

更新: 2009年05月07日 17:27

ソース: 『bounce』 309号(2009/4/25)

文/リョウ 原田