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インタビュー

Dew


  〈Dew〉には、朝霧、(霧のような)しずく、(霧のように)純粋なもの、爽やかなものという意味があり、それはそのまま彼女たちのニュー・アルバム『PRESENT』の中身を過不足なく言い当てている。純粋な思いが詰まった楽曲、豊かな響きを湛えたコーラスワーク、オーガニックな手触りのサウンドメイクに触れているうちに心が浄化され、潤いのある気分になっていく――そんな効果を持ったポップスがこの時代に存在すること自体、とても貴重だと思う。このアルバムの制作にあたって2人は、「メッセージを聴き手に届けること」(清水悠)を強く意識していたという。

 「去年の夏にリリースした『花図鑑』というミニ・アルバムの時は、自分たちの世界観を表現することを中心に考えてたんですね。私たちの世界に入ってきてください、っていう。でも、“プレゼント”という曲をライヴで歌っていくうちに、〈こういう気持ち、すごくわかります〉という反応がたくさん返ってきて、そのことにとても幸せを感じたんです。この曲は私たちのオリジナルではないんですけど、自分でもこういう曲を書いてみたい、歌を通して(リスナーと)コミュニケーションしたいという気持ちがどんどん強くなって」(清水)。

 「以前は曲のなかで風景を描くことが多かったんです。でも今回のアルバムでは曲のなかにいる人が何を考えて、どんなことを伝えようとしているかを表現してるんですよね。そこは大きな違いだと思います」(大西春奈)。

 〈いつも一番綺麗な 私をあげる〉というフレーズを持つ、ピュアなラヴソング“プレゼント”、離れてしまった〈あなた〉への真っ直ぐな思いを描いた“星にねがいを”、〈愛しいと君に伝えてあげたい〉と語りかけるバラード“Dear”。確かに『PRESENT』にはシンプルで力強いメッセージを含んだ曲が多い。しかし、その方向性はDewの原点でもあるという。

 「2人で初めて作った“君へ”(『croquis』に収録)は、高校時代にカナダへ留学していた時に、仲間たちに向けて書いた曲なんです。素敵な時間をいっしょに過ごした人たちに、自分たちの思いを伝えたいって。この1年間、もっと成長するためにはどうしたらいいだろう?ってすごく考えて考えて、その結果、いちばん最初の場所に戻ってきたような気もしますね。より多くの人に共感してもらう歌を作るためには、まず自分の正直な思いを伝えなくちゃいけないんだって」(清水)。

 また、ギター・ポップ系のアプローチが施された“若葉”、ゆったりとした素朴な雰囲気が広がっていく“Forget-me-not”、緊張感のあるバンド・サウンドが印象的な“Fragile”など、広がりを感じさせるカラフルなサウンド・プロダクションもこのアルバムの特徴。それによって彼女たちの情感豊かなメロディーはさらに美しく際立っているのだ。

 「いまも軸になっているのはピアノと歌なんですけど、他の音が入ってきてもしっかりイメージができるようになったというか。食わず嫌いはだいぶなくなりました(笑)」(大西)。

 「相変わらず専門用語はわからないんですけど、とにかく自分たちの意志を(スタッフに)伝えるようにしてましたね。〈鳥が羽ばたくように……〉とか〈青春の甘酸っぱさを……〉とか(笑)」(清水)。

 スタンダードなポップスとしての魅力を備えた『PRESENT』。その制作を通して、彼女たち自身も大きな成長を遂げたようだ。

 「ポップスっていうのはすごく広がりのある音楽だと思うんです。だからこそ音楽にそれほど興味のない人や小学生、中学生にも届くんじゃないかなって。最近はJ-Popもよく聴くようになったし、そこはもっともっと追求してみたいですね」(清水)。

PROFILE

Dew
清水悠(ヴォーカル)と大西春奈(ヴォーカル/ピアノ)から成る、23歳の現役女子大生2人組。共に通っていたカナダの高校で結成され、帰国後の2006年にファースト・アルバム『croquis』をリリース。2007年にはTVCMソングに起用されたメジャー・デビュー・シングル“プレゼント”を発表して一気に注目を集める。2008年7月には花をテーマにしたミニ・アルバム『花図鑑』を、同年10月にはカヴァー・アルバム『花図鑑 別冊』をリリース。今年の1月から東京駅で行っているマンスリーのフリー・ライヴも話題となる。“My Special Day”“Thank you”と2枚の先行シングルを発表して、このたびニュー・アルバム『PRESENT』(ビクター)をリリースしたばかり。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2009年05月28日 17:00

更新: 2009年05月28日 17:28

ソース: 『bounce』 310号(2009/5/25)

文/森 朋之