〈アイドル〉たちのその後…… (その1)
お化け番組「アメリカン・アイドル」も、クリス・アレンの優勝で幕を下ろしたシーズン8を経て9年目の準備がスタートしている。ファイナリスト(毎回のTOP12名)だけでもすでに100人近くが誕生し、各々が一時的に多くのファンを獲得するわけで、シーズン終了後には優勝/準優勝という〈正規ルート〉以外でも多くの面々がデビューを飾ることになるのだ。が、その人気も永遠ではない……。ここでは前回〈アメアイ〉を特集した2006年冬以降のリリースを中心に、ファイナリストたちのその後の奮闘ぶりを紹介していこう。そうした栄枯盛衰の残酷さも〈アメアイ〉のおもしろさなのだ。
KELLY CLARKSON
『All I Ever Wanted』 19/RCA(2009)
第1シーズンで優勝したケリーの4作目。パクリ騒ぎでケチがついた部分もあるが、“My Life Would Suck Without You”がデビュー以来のNo.1ヒットになるなど、腹を括った厚化粧サウンドが楽しい快作だ。彼女の成功は今後も全米中の後進に夢を見せてしまうのだろう。
RUBEN STUDDARD
『Love Is』 Hickory(2009)
第2シーズンで優勝して規定の3作を残した熊が、ヒッコリー(ソニー系列のインディー)から放った4作目。本人の嗜好を反映してかメインストリーム感は後退したが、スターゲイトやジャム&ルイスが歌声の円熟味を巧く抽出。エクストリームやビートルズのカヴァー解釈も流石だ。
CLAY AIKEN
『On My Way Here』 RCA(2008)
第2シーズンで2位に終わりながら、ルーベン以上に人気を博した〈天使の歌声〉の主。ライアン・テダーやデヴィッド・フォスターも参加したこの3作目では、そこに逞しさも加えた歌唱を伸びやかに聴かせる。上手すぎ。なお、本作リリース後にゲイであることをカムアウトした。
GEORGE HUFF
『George Huff』 E1(2009)
第3シーズンで5位に終わったニューオーリンズ出身のゴスペル・シンガー。デビュー作『Miracles』の発表直前に自宅を〈カトリーナ〉の被害で失うという不幸に見舞われたが、4年ぶりとなるこのセカンド・アルバムでもダイナミックな歌唱法は健在だ。SWVのココも声を重ねている。
JENNIFER HUDSON
『Jennifer Hudson』 Arista(2008)
いまや第3シーズンの7位……などと書く必要もないオスカー女優の〈ドリームガール〉。本デビュー作にもニーヨ作の“Spotlight”など良曲が揃うが、注目は同シーズンを制したファンテイジア相手に火花を散らす“I'm His Only Woman”。悲劇を乗り越えて結婚/出産したばかり。
CARRIE UNDERWOOD
『Carnival Ride』 19/Arista Nashville(2007)
カントリー・ポップの王道を行く番組の出世頭。アーシーなロック調からソープ・オペラ系バラードまでを歌い、オクラホマ出身で恋人はスポーツ選手……と、ある意味では古典的なアイドルっぽい。秋に出る次作でテイラー・スウィフトを追撃する予定。
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