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インタビュー

SAKURA

たくさん流した涙を癒しの歌に変え、R&Bフィールドに戻ってきた歌姫。ようやく手に入れた真実の愛が、私たちの心を優しく満たす

  近年はウクレレをみずからのサウンド・アイコンとして採り入れるなど、サーフ・ミュージック的なオーガニック路線のアプローチが目立っていたSAKURA。しかし、2年ぶりとなるニュー・アルバム『REAL LOVE』はというと……これが直球のR&Bアルバムとなった。12年前、真っ只中だった〈日本のR&Bブーム〉の最右翼的存在としてメジャー・デビューを飾り、それ以来R&Bを自身のスタイルの根底に置いてきた彼女だけあって、まさしく本領発揮といった内容だ。

 「R&Bというのは言葉で言い表せない哀愁やドロドロとした感情、そういうものを内包しているジャンル。深くて奥行きのある音楽だけに、私にとって研究してもし尽くせないジャンルなんですよ。だからこのアルバムは、ある意味原点回帰ともいえますけど、それよりはさらに突き進んで、どんどん深みにはまってしまったという感じですね(笑)」。

 ディスコ調のオケで〈これぞ!〉というソウルフルな歌声が聴ける“savior”、フェンダー・ローズの音色と甘い歌声が恋をしたような極上バラード“運命の男”、「自分が影響を受けた90年代R&Bのアーシーな世界観を表現したかった」というヒップホップ・ソウルのグルーヴにクールなラップを乗せた“real love”など、〈こんなSAKURAが聴きたかったのよ!〉と小躍りしたくなるような、大人の女性だからこそのセンスが滲み出た格別の仕上がりである。それにしても、なぜ本作ではここまでR&Bを意識したのだろうか。

 「〈REAL LOVE〉というテーマあってのR&Bなんですよね。リアルを追求すると、きれいなことだけじゃなくダークなことも当然ある。今回はそれを正直に誠実に歌いたいと思って。で、そのディープなテーマにマッチするサウンドってものを考えた時に、これはやっぱりR&Bしかないなって」。

 つまり、あくまでリリックを前提としたサウンド。これは大いに頷ける。本作には決して音に酔わせるだけでは終わらない、伝えたい言葉の主張がしかとあるのだ。唯一、作詞を人に委ねたナンバー=Nao'ymt作詞/プロデュース(オアフ島まで出向き、現地のウクレレ奏者を迎えての楽曲制作!)の“keep on breathin'”も、「私がいままでさんざん泣いてきたのを陰で見てたのかと思うくらい(笑)、胸の内を代弁してくれた」と語るほどで、その心の闇と光の描写を丁寧に歌い込んだヴォーカルには胸を打たれる。それらの歌詞から察するに、決して平坦ではなかっただろう過去。それを乗り越えて導き出した真実の愛とは?

 「真実の愛はセルフ・ラヴから始まる。大事なのは自分の心と身体を愛してあげること。この2年間、私自身がセルフ・ラヴをすごくがんばったんですね。で、いまは自分へのリスペクトや感謝の気持ちに満ち溢れていて、とっても幸せを感じてるんです。だからその経験をアルバムに託して伝えて、傷付いている人たちを癒せたらいいなって。自分がたくさん悔し涙を流してきたことさえも、人を勇気付けるという形でパワーに変えていこうと。私は何のために歌ってるのか、12年歌い続けてきて辿り着いた答えはまさにそこ。私は〈音楽で人を癒す〉ために歌っているんです」。

 穏やかで大らかな愛の結晶――『REAL LOVE』は、SAKURAがすべての人に捧ぐ〈至高の癒し〉というギフトだ。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2009年08月26日 18:00

更新: 2009年08月26日 18:11

ソース: 『bounce』 313号(2009/8/25)

文/岡部 徳枝

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