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インタビュー

Indus & Rocks 『Hidaripokenicca』 ラストラム



  挑みかかるように、それでいて呼応し合うように、ギター、ドラムス、ベースの3つの音がしなやかに重なり合い、淀みなく変化するリズムやフレーズを一糸乱れぬ足並みで追いかける。エネルギッシュな音の奔流に乗って大自然のなかを高速で巡るかのごとく、雄大かつエキサイティングなサウンドスケープを描く“水”。流れるように展開する構成力によって11分近い長尺であることを感じさせない(体感時間は5分ほど?)この曲を冒頭で浴びた瞬間、意識は果てしなく舞い上がる上昇気流に煽られて、どこかへ飛んでいってしまった。

 ジャム・バンドにしてジャム・バンドにあらず――スリリングなインプロヴィゼーションも和の情緒を匂わせる歌モノも、ロックの名のもとで滑らかに融和させるスリーピース・バンド、Indus & Rocks。2005年よりみずからの独自性を育んできた彼らによるデビュー・ミニ・アルバム『Hidaripokenicca』は、演奏者のスキルの高さもさることながら、聴き手をイマジネーションの旅へと引き込む楽曲自体のパワーがものすごい。問答無用のトランス感覚を呼び寄せるクラブ・ミュージック的なグルーヴと、そこから想像される密室感を軽々と吹き飛ばす風通しの良いサウンド。しかし、彼らの強みはそれだけではなく、例えば上述の“水”とレゲエ~ダブをベースとした大らかなビートに情感溢れる日本語詞を乗せた“心養い歌踊る”を並べて提示できるだけの包容力も併せ持っている。規格をきちんと理解したうえで、どうやってその規格の外へ飛び出してゆくか――みずからのエモーションにのみ従って発せられる自由度の高いフレーズ同士を、どう違和感なく調和させるか。その緻密な作業を意識させることなく聴かせ切ってしまうミュージシャンシップに彼らの凄味を感じる。ダンス・ミュージックとしての機能性も抜群なので、ロック好きのみならず、幅広いリスナーに触れてほしい一枚だ。

カテゴリ : ニューフェイズ

掲載: 2009年10月07日 18:00

文/土田 真弓

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