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インタビュー

インタヴュー熊谷和徳──マイケル・ジャクソン・チルドレン

熊谷がタップに目覚めたのは意外にも、昨年他界したマイケル・ジャクソンがきっかけだった。テレビのグラミー賞にマイケルが出演した際、彼が影響を受けたアーティストとして名を挙げていたのが、サミー・デイヴィス・Jrやフレッド・アステアなど往年の名タップダンサーたちだった。「五歳の頃から好きだった」マイケルは、熊谷にとってただアイドルだっただけではなく、様々な音楽への入り口の役割も果たしてくれた。「音楽はほとんどマイケル・ジャクソンを通して知ったんです。《We Are The World》でスティーヴィー・ワンダーとかクインシー・ジョーンズとかも知った。マイケル・ジャクソンがすべての入り口になっていて、そこから音楽やダンスに目覚めた」。幼い頃から「どうやったらマイケル・ジャクソンになれるか」と「ポップの王様」になることを夢見ていた。

マイケル・ジャクソンと熊谷和徳の共通点を一つ挙げるとするならば、それは舞台にすべてを残していきたいという強い思いだろう。その思いが、彼らのパフォーマンスを単なるエンターテインメント以上の何ものかにしている。二人は一見華やかなエンターテインメントの世界の中心にいながら、同時に孤独に自己を探究し、自らのパフォーマンスの中に自己の救済を求めている。「単なるエンターテインメントに対するあんまり良くないイメージが自分のなかにあって、むしろ自分の精神とか、自分の気持ちを表現することのために踊ってきて、それを変える必要はないなと思っているし、その一方で人を楽しませたいという気持ちも合って、その両方がある」。何かのためではなく、どうしても踊らなければならない必然性が、自分自身の中から溢れ出してくる。熊谷のタップからはそういった初期衝動のようなものが感じ取れる。それは熊谷自身の救済であり、同時に聴衆の心も期せずして救済してしまうだろう。

カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2010年03月23日 20:31

ソース: Web Exclusive

interview & text : 山本拓