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インタビュー

INTERVIEW(4)――物騒なタイトルですいません

 

物騒なタイトルですいません

 

――でもソニック・ユース“PURR”のカヴァーとかって、〈原点回帰なのかな?〉と思わせる要因にはなってると思うんですけど。

「ホントそうですよね(笑)。これはメンバーから出た意見じゃなくて、スタッフ側から〈何かカヴァー入れたらおもしろいんじゃない?〉って。で、逆にいまソニック・ユースやるのはおもしろいかもって。それもいろいろ知恵を働かせてアレンジするんじゃなくて、スタジオで2回ぐらい原曲を聴いて、構成だけ覚えて、せーのでやっただけ。もちろん当時聴き狂ったアルバム(92年作『Dirty』)だったんで大体入ってるんですけど、カヴァーじゃなくて、コピーなんですよ。コピーもできてないぐらい(笑)」

――今回のアルバムには“PURR”があって、“youth”っていうタイトルの曲があって、“Kingdom Come”もちょっとソニック・ユースっぽい部分があるなって思ったんですね。彼らも山あり谷ありですけど、オルタナ界隈においていまも続いているバンドの象徴じゃないですか? 彼らとモーサムの姿がリンクするようにも感じたんですよね。

「ソニック・ユースって、結構理想のバンド像なんですよね。長いこと続けるのは簡単じゃないけど、大事なものを失わずにずっと活動してる気がするので、信念とかっていうとカッコ悪いけど、ずっと貫いてるものがあるなと思って。そういう部分がソニック・ユースの素晴らしいところっていうか、俺らもそうありたいなって」

――“Kingdom Come”は曲も素晴らしいし、歌詞の面からしてもアルバムの核になっている曲だと思います。

「僕もそう思ってますけど、それは言う必要ないっていうか――言っていただいたんでありがたいなと思ったけど――もう今回ほど、歌詞で言い尽くした感のあるアルバムもないと思うんです。“Kingdom Come”は今回のアルバムから漏れそうな曲だったんですよ。元々ソロでやればいいやと思って作った曲なんで。それこそ最初はマイブラみたいなアレンジで、ドローンなギターが延々ループで入ってたり、フワフワした浮遊感のある歌になってたりしたんだけど、歌詞をつけてしまったら〈これ、いまじゃないと歌えんな。このアルバムに入れたいな〉ってなってしまって。じゃあ、そのためにどうすればいいかってなったときに、最終的にあのアレンジになって。ストラグル感を出すってことなんですけど(笑)」

――(笑)。

「最初にデモ作ったときのアレンジもすごく良かったんで、最初みんながぶち壊し出したときは自分の娘がレイプされるような気分で(笑)。でもね、家に帰って一旦リセットしてからもう一回聴いてみると、〈このアレンジしかあり得ない〉って思ったんですよ。バンドって素敵だなって思いましたね(笑)」

――最初に〈美談にするようなこともない〉っておっしゃってましたけど、“Kingdom Come”の〈一からやり直そう〉〈そこからはじめるのさ〉って歌詞に象徴されるように、やっぱり〈続けていくこと〉の決意がすごく伝わるアルバムになってると思うんですよね。

「でしょうね。“Kingdom Come”をこのアルバムに入れたいと思ったのは、結局そういうことだと思うんですけど、作ってる最中はそこまで自覚してなくて。あんまり頭で考えずに、ハートで書くみたいな感覚でやってたんで、ドキュメンタリーなんですよね。〈そのまま出す〉って何度も言ってるのもそうだし、ちゃんと脚本があって、絵コンテとかいろんなもん作りこんで、〈はい、最後泣いてください〉みたいな、ハリウッド作品的なものではなくて、もうホントどっちに転ぶかわかんないけど、ただただカメラが追ってるドキュメンタリーだなと思って。歌詞はあんまり考え込まずに書いとったんで、あとで読み返すと〈まあ、いろんなことがあったなあ〉って(笑)。最後にアルバム・タイトルつけたんですけど、それはもう俺は『STRUGGLE』しかなかったですね。〈物騒なタイトルですいません、でもこれしかないんです〉って」

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掲載: 2010年12月08日 18:01

インタヴュー・文/金子厚武