WESTLIFE 『Gravity』
今度の4人は優しいだけじゃない! 美しいハーモニーに色気と野性を加えて大人の魅力を振りまいている!
アイルランド出身のウェストライフは、98年のデビュー以来、甘いハーモニーで紡ぐラヴソングを得意としてきた。その彼らが10作目にあたるニュー・アルバム『Gravity』で新境地を拓いた。デビュー時からの付き合いになるプロデューサーは誰も参加せず、その代わりジョン・シャンクスがひとりでアルバム全編をプロデュースしている。
「ジョ ンと組むことは2年前から熱望していたんだ。でも、僕らがオファーした時、彼はちょうどテイク・ザットをプロデュースしていた。同じようなタイプのグループを同時期に手掛けることに、彼が難色を示したんだよね。それで諦めたけれど、今回テイク・ザットがスチュワート・プライスと組むことにしたので、僕らの希望がようやく叶ったというわけさ」。
こう答えてくれたのはニッキー・バーン。今回日本用のインタヴューには彼が応じてくれた。でも、なぜ自分たちを育てたスティーヴ・マックではなく、ジョンと組んだのか。
「スティーヴとはもう3年は仕事していないかな。ケンカ別れしたわけじゃない。ただ、デビュー時からずっとやっていると新鮮味がなくなるよね。それと僕らが10年後を見据えた時に成長し続けたいと願った。そのためにもジョンといっしょに仕事をしたかったんだ」。
ジョンはご存じの通りボン・ジョヴィらの作品を手掛けた人で、ロック系を得意としている。最初はこの人選が意外だったが、アルバムにロックの要素を組み入れたことで、全員が30代の大人になった部分がうまく表現されている。
「前9作とはまったく異なるレコーディングだった。ジョンは僕らに条件を出していた。ひとつが毎日スタジオに全員が来ること。これまでは自分のパートを歌う時だけスタジオに行けば良かった。だから最初は難しいかと思ったけど、これが楽しくてね。全員で語らい、食事をして、曲を書いて歌って。LAでの3週間は充実していた。彼にお願いすることで、音楽的な方向転換を狙ったわけじゃないけれど、結果としてロック・サウンドを全編で打ち出すことができた。これもジョ ンのおかげ」。
ジョンはもうひとつ条件を出した。全員が曲作りに参加することだ。ウェストライフはデビュー時から「僕らのエゴで曲を書くよりも優れたソングライターに提供してもらった楽曲を優先させたい」というスタンスを貫いてきた。そんな彼らが2曲をジョンらと共作。そのうちのひとつがアイリッシュ風のアレンジが印象的なバラード“Too Hard To Say Goodbye”だ。
「僕とジョンの雑談が発端になった曲なんだ。僕が亡くなった父の話を、ジョンが健在だけれど高齢のお父さんの話をしていたら、星空の下で2人とも涙が溢れてきてしまって。その時に彼が〈この瞬間を歌にしなくては〉と言って、スタジオでピアノを弾き、僕らがそれぞれに歌詞を考えたのが“Too Hard To Say Goodbye”。ただ、歌う時はシェーンとマークのお父さんは健在なので、個人的な感情に走らないようにした。アイリッシュのアレンジはジョンのアイデア。僕らはそういうことをしてこなかったから、最初はえっ?という感じだったけれどね。で、彼が声を掛けたイーリアン・パイプ奏者は、映画〈タイタニッ ク〉のサントラでも演奏したエリック・リグター。流石にそれには驚いたよ」。
今回もカヴァーが2曲ある。フーバスタンクの“The Reason”とアスリートの“Chances”。メンバーの好きな曲が選ばれたという。このように、『Gravity』はシングル・ヒットを多く生むことより、アルバムの完成度を優先させた作品。ニッキーも、「曲作りにもヴォーカルにも本当の僕らが投影されている。自分たちでも最高傑作だと言える出来だと思う」と誇らしげに語っている。
▼ウェストライフのアルバムを紹介。
左から、2004年作『Allow Us To Be Frank』、2005年作『Face To Face』、2006年作『The Love Album』、2007年作『Back Home』、2009年作『Where We Are』(すべてSyco/Sony UK)
▼関連盤を紹介。
左から、フーバスタンクの2003年作『The Reason』(Island)、アスリートの2005年作『Tourist』(Parlophone)
カテゴリ : インタビューファイル
掲載: 2011年01月26日 14:36
更新: 2011年01月26日 14:37
ソース: bounce 328号 (2010年12月25日発行)
インタヴュー・文/服部のり子