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インタビュー

9mm Parabellum Bullet 『Movement』

 

目新しい表現を繰り出しているわけではないけど、新作のたびに〈そうきたか!〉と思わず唸ってしまうお楽しみを必ず見せてくれる彼ら。さて、今回も〈まさか!〉が詰まった魅惑の玉手箱を開けちゃいましょうか?

 

9mm_A

 

少し大人になったような感じが出せた

パンクやメタル、ハードコアを融合したラウドでファストな音楽性と、衝動に溢れたライヴ・パフォーマンスで日本のロック・シーンのトップクラスにまで上り詰めた9mm Parabellum Bullet。ツアーをはじめ数多くのライヴ日程の合間を縫うように、「這いつくばってでも作るしかなかった(笑)」(滝善充、ギター)と言うほどかなりタイトなスケジュールで作られたという前作『Revolutionary』以降、ライヴDVDのリリースこそあったものの、シングルなどを含めてオリジナル作品の発表は1年以上空いている。これは2007年のメジャー・デビュー以降初めてのこと。4枚目のニュー・アルバム『Movement』は十分な準備期間を経て制作されたという。

「今回はレコーディング前に20曲以上作って、半分捨てられるぐらいの余裕があったので、精鋭って感じの曲が集められてますね。大部分は合宿で作ったんですけど、〈合宿でどうにかしなきゃ〉っていう不安を消したくて、合宿前には10曲以上作ってました。そのうえでいちばんいいアイデアは合宿に取っておいたんです。それが“新しい光”でした」(滝)。

そんな選りすぐりの楽曲が揃った新作からは、9mmらしさはそのままだが、これまで以上にポップに、そしてメランコリックになったような印象を受ける。従来のイメージ・カラーが黒だとすれば、まさにそこへ〈新しい光〉がうっすらと射したような——しかし、メンバー自身はそこまで変化を意識していなかったという。

「〈ちょっと変わったね〉って言われるんですけど、それはもともと9mmが持ってた部分だと思うんです。前のアルバムまでの激しい部分とかギラギラした感じも、それが9mmの核だったわけじゃなくて、あくまで一部分なので。今回は少し大人になったような感じが出せたかなと思ってます」(中村和彦、ベース)。

「〈3枚も作ればネタがなくなる〉とか〈伸びしろがなくなる〉とか言われるので、これまでと変わらずおもしろいことをやりたいなってぐらいでしたね」(かみじょうちひろ、ドラムス)。

「いままではかたくなにメジャー・コードを嫌ってやってきたのですが、やっとその気持ちが解けて、普通になってきただけなんですけど、前が前だったんでだいぶ明るく聴こえるっていう(笑)。何でこうなったのかって言われると難しいんですけど……メジャー・コードの気持ち悪さにビビらなくなったのかな」(滝)。

グッとくるものを発見できる曲

メンバーの言うように、決して本作で9mmが180度変わったわけではないのだが、いくつかの印象的な楽曲がポップでメランコリックなイメージを増幅させているのは間違いないだろう。例えば、メランコリックな側面を決定付けているのが中盤に収められた“星に願いを”。彼らには珍しい3拍子と、メルヘンチックな歌詞を持った名曲だ。

 「その日のスタジオはみんな調子が悪かったんですけど、もう帰ろうか……ぐらいのときに、試しにやってみたら15分ぐらいで完成して。その時点で凄まじくいい感触がありました。それにメロディーを付けた日の夜、最初に俺がすごい勢いで歌詞を書いちゃったんです。そんなことは生まれて初めてでしたね。1時間ぐらいで書けたんですけど、それをまた3時間ぐらいかけて検証して(笑)、結局は卓郎に預けました」(滝)。

「とても曲に思い入れがあるって言ってたので、元の歌詞のイメージは根っこに感じられるようにして、もうちょっと曲の展開に合った物語になればいいと思って。童謡みたいになったらいいなとも思って書いてたんですけど、出来上がってみたら童謡みたいっていうより、童話そのものな感じになりましたね」(菅原卓郎、ヴォーカル/ギター)。

本作も曲作りの中心が滝であることに変わりはないが、中村も好対照な2曲——アルバムのなかでもっともヘヴィーな“Muddy Mouth”と、軽快なタッチが心地良い“Monday”——で曲調のヴァラエティーを広げている。

 「“Muddy Mouth”は遅さの限りを尽くした曲です(笑)。こういう曲はいままでだったらふざけた感じになってたと思うんですけど、このアルバムに入れてみたら本気な感じが出てて、いまのタイミングで出せて良かったと思います」(中村)。

そして、もっとも驚きを持って迎えられるであろう曲がラストに収録された“カモメ”だ。曲自体は2006年頃にはあったそうだが、アコギをフィーチャーし、フォーキーとも言えるアレンジが施された明確な新機軸となっている。

 「ラウドな9mmはすぐ見えるんですけど、落ち着いた曲をやる9mmは実はいまもそんなに見えてなくて。でも、“カモメ”は最初からアコギで考えてたんで、フォーキーなアレンジにしたのも良かったと思います。ただライヴではまだやってないんで、ゆっくりな曲を演奏してどうなるのかはさっぱりわかりません(笑)」(滝)。

アルバム・タイトルの『Movement』は“新しい光”をはじめとした数曲から〈移動している〉感じを受けたために付けられたという。それは同時に、恐れることなく変化を続けるバンド自身のことも表していると言えるだろう。そう、9mmはまだまだ止まらない。

 「そのときに旬だと思うものが自然と出てくるんだと思うんです。曲として新しいものが感じられて、何かいい予感がするものを選ぶのがいちばんですからね。〈これなら聴いててグッとくる〉っていうものさえ発見できれば、テンポも、コードがメジャーでもマイナーでも、実はそんなに関係ないと思うんで、そこはオープンにしてこれからもやっていきたいですね」(菅原)。


カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2011年12月27日 21:00

更新: 2011年12月27日 21:00

ソース: bounce 334号(2011年7月25日発行)

インタヴュー・文/金子厚武