インタビュー

木村カエラ 『8EIGHT8』

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オリジナルとしては、前作『HOCUS POCUS』から約2年4ヶ月ぶりとなる6thアルバム『8EIGHT8』を
完成させた木村カエラ。
トータルプロデュースに渡邊忍(ASPARAGUS)を迎え、彼女のライヴを支えてきたバンドメンバーと
共に製作された本作には、彼女いわく「みんなが共感できる素直で強い言葉」がならんでいる。



「どの曲にも<人とのつながり>の大切さや<対人>に向けた思いが入ってますね」



―横浜ブリッツでのワンマンでライヴ活動を再開したことには、
どんな理由があったんですか?

 
「もともと夏フェスに出るのは決まっていたので、
曲数の少ないフェスからやるっていう案もあったんですけど、
ずっと待っててくれた人たちの前に、一番最初に戻りたいって思ったんです。
いつもやってるライヴハウスで、「ただいま」って帰っていくことが、
素敵な形かなって思って。
いきなりのワンマンだから、不安や緊張もあったんですけど、
実際にステージに出たら、「あ、なんか懐かしいな」って感じたんですね。
なにより、お客さんが盛り上がってくれて、みんなが「おかえり~」って
言ってくれたのがありがたくて。
お客さんの顔を見ながら歌っていくなかで、ライヴの声の出し方や感覚が
だんだん戻ってきたっていう感じでしたね」


―ライヴ活動を休止する前となにか違ってたことはある?


「動けなかった分、自分が楽しむことよりも、お客さんを楽しませたいっていう
気持ちが以前よりも大きくなってると思います。
自分のことよりもお客さんのことを見て、歌うようになったと思いますね」


―「お客さんを楽しませたい」という外向きの意識は
ニュー・アルバム『8EIGHT8』にも色濃く反映されてるように思いました。


「そうですね。どの曲にも<人とのつながり>の大切さや<対人>に向けた思いが入ってますね。
このアルバムのなかで、いちばん最初にレコーディングしたのが“Ring a Ding Dong”で、
<ありがとう>っていう感謝の言葉をちゃんと伝えることの大切さを歌ってて。
“A winter fairy is melting a snowman”も人と人のつながりを信じる気持ちを書いてるし、
“orange”も近くにいる人の存在の大切さを歌ってるし……」


―アルバムの最後を飾るミドル・バラード“チョコレート”
では、改めて<ありがとう>と<ごめんね>を優しくつぶやいてます。


「アルバムの最後にレコーディングした曲なんですけど、
私のなかではいままでとは違う感覚で出てきた、新しい自分が見えた曲だなって思ってて。
<ごめんね>には、感謝の気持ちがこもってるので、結局は<ありがとう>と同じ意味として
書いてるんですね。これまではこんなに素直で強い言葉を書いたことはなかったけど、
<ありがとう>や<ごめんね>を言えることが、人と人をつなげるためにも大事だなって思ってて。
“チョコレート”と“Ring a Ding Dong”は、私がいま言いたい言葉が詰まっていて、
アルバムのタイトルになっている『8EIGHT8』には、いまの自分がいちばん伝えたい思いが
込められてるなって思いますね」

  

 

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―『8EIGHT8』の主人公は、<8つの目をもつクモ>になってますね。


「最初に曲を聴いたときに、ただ単純に、クモが浮かんだんですね。
そこから、クモの巣だったり、クモの巣をモチーフにして作られているドリーム・キャッチャーを思いついて、
そこから物語を考えていったんです。自分のことよりも、大切な人のことを守るために、
寝ている人の悪い夢を全部食べて、自分は真っ黒くて醜い姿になっちゃう。
キレイだったクモが真っ黒になって、みんなに怖がられるんじゃないかって心配してるんだけど、
それでもクモは、自分は犠牲になってもいいんだっていう強さがあって。
自分以外の大切な人や誰かが幸せであればいいっていうクモの愛情はみんなに伝わってるから、
最終的には、人とのつながりによって、また誰かに助けられるっていう結末があるんじゃないかって思ってて」


―<EIGHT>の両側についた数字の<8>にはどんな意味があります?


「<8>は横にすると<∞>のマークになるでしょ。
それが、永遠にぐるぐるまわる<人とのつながり>を表してて。
2枚目のアルバム『Circle』では、自分の感情が毎日ぐるぐる回ってる状態だったけど、
『8EIGHT8』にはいい意味での循環が表されるなって思ったんですね」


―自問自答していた1つの円が、手をつないで2つの円になって、思いやる心が循環してるっていうイメージ?


「このアルバムより以前の私の歌詞は、自分の内面と向き合ってばっかりだったんですよね。
対人が書かれていたとしても、その人と関わる前に、自分の内面を分析して、悩みをクリアにして、
そこで生まれた感情で自分を救ってから、外に出してた。
まず、自分の内面をどうにかしないと、人を楽しませることはできないっていう状態だったんですよ。
でも、自分が親になってみると、自分自身の悩みと向き合ってる場合じゃないし、
自分よりも守るべきものがあることに気づいた。
さらに、震災もあったことで、自分以外の人のことをすごく考えるようになって……。
人に対して、自分ができることを探すようになったときに、同じ気持ちを共有するっていうことが、
今はすごく必要なんじゃないかって思ったんですよね。
みんなが共感できる素直な言葉には強いものがあると思っていたので、
私が書く歌詞も自然と素直な言葉になっていった。
聴いてくれた人が元気になればいいなって思う気持ちは変わってないけど、
それにプラスして、苦しみを抱えている人の気持ちを少しでも分かりたいと思ってたし、
共感することの大切さや、人に対する愛情や優しさを意識しながら作ったアルバムになってると思いますね」

 

■New Album……『8EIGHT8』10/12 on sale!

■ SONG LIST…
01.Make my day!  
02.KEKKO  
03.8EIGHT8
04.Ring a Ding Dong
05.うたうらら 
06.lollipop
07.ホシノタネ 
08.Moon Light 
09.喜怒哀楽 plus 愛
10.deep beep 
11.A winter fairy is melting a snowman
12.orange 
13.チョコレート

■ TOUR… 「木村カエラ LIVE HOUSE TOUR2012」

2012年
1/8 (日)Zepp Sapporo
1/12(木)Zepp Fukuoka
1/20(金)Zepp Sendai
1/26(木)、27(金)Zepp Nagoya
2/2 (木)、3(金)Zepp Osaka
2/14(火)、15(水)Zepp Tokyo

■ PROFILE…木村カエラ

木村カエラ
84年10月24日生まれ。A型。04年6月メジャー・デビュー。
ライヴ・ツアーだけでなくフェス・イヴェントにも積極的に参加する一方でCMにも多数出演し、
唯一無二の存在に。これまでに5枚のオリジナル・アルバムをリリース。
昨年2月、初のベスト・アルバム『5years』を発売。
また“Ring a Ding Dong”はオリコン・シングルウィークリー・チャートで自身初の1位を獲得した。

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記事内容:TOWER 2011/10/5号より掲載

カテゴリ : COVER ARTIST

掲載: 2011年10月05日 12:00

ソース: 2011/10/5

TEXT:永堀アツオ