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インタビュー

INTERVIEW(3)――HALFBYなりの〈ポップスへの回答〉



HALFBYなりの〈ポップスへの回答〉



—―新作『Leaders Of The New School』は、前作のトロピカルな路線を受け継ぎつつ、ムーンバートンを含め、ベース・ミュージックとしての要素をより強く感じます。こういう音楽にズッポリいきたいというきっかけが何かあったのでしょうか?

「自分のなかで、前作までは手広くやっていたものを次はもうちょっとフォーカスしてやろうかな、という変化があったんです。直接何かのきっかけが、っていうのはないんですれど、単純にここ1年くらいはDJで何をかけようかな、っていうのもままならない状態で。いまは新譜もアナログ盤が出たら聴くっていう感じでもないし、データ配信だけとか、ネットとかも含めてブートがすごい数があったり情報量がすごいあって。それで単純に新譜を追い掛けるということをやめて、とにかく気になるものを聴いて方向性を探っていたら、自分のモードがこうなったんじゃないかな、と」


――ムーンバートン以外にも、ボルティモアやバイリ・ファンキ、フィジェット・ハウスといった、ディプロもピックアップしてきたような種々のベース・ミュージックを、独自のオリジナリティーとクオリティーをもって租借されてますね。


「ディプロとかが出てきた時期って、〈いまはこういうのも、いいよね〉という感じで聴いていたんですけど、今回自分で作ってみて、そういった音楽が思った以上に自分に浸透していることがわかった。ただ、ディプロがやっていることを全部やろうという考えではなくて。彼は、バイリ・ファンキとかボルティモアにしても、ポップ・ミュージックへの繰り上げ方、パッケージングが上手い。M.I.A.もそれ(特定ジャンル)だけのブレイクではなかったですし。その繰り上げ方は自分的にもグッときていて、HALFBYが持っていた〈ポップスへの回答〉にも通じるものがあるんじゃないかと思った。結果、こういう作品にもなったというのはあります」


―― 一方で今回は、1曲目冒頭のナレーション(数々のヒップホップ・スラングと共に、アルバムを紹介する女性ナレーションが入る)に始まり、曲名やアルバム・タイトルにしてもヒップホップ・ワードが散りばめられているわけですけれど。ヒップホップでベース・ミュージックをパッケージしたいというアイデアはいつから?


「ムーンバートンを知ったくらいのときですかね。その頃、好んで聴いていたムーンバートンの曲が、ニュー・スクールやミドル・スクールのような、ヒップホップ・マナー的な要素が強いものだったんですよ。アルバムの“Tommy Boy”という曲も、母体としては〈BPM110のサンプリングを軸としているブレイクビーツで、レイヴィーなシンセや、トライバルなビートが入ってくる〉みたいな、ボヤッとしたアイデアで作っていたもので。それがムーンバートンと似ているんじゃないかと思ったんですよね。レゲトンであったりムーンバーコアみたいなギラギラした方向に流れるんではなく、自分がムーンバートンにグッときている部分――ネイティヴ・タン、デ・ラ・ソウルとかを昔聴いていた流れと相性がいいんじゃないかな、と思った部分は今回大きく反映したところですね」


――BPM110だといろんな音楽のプラットホームになり得る、みたいな部分にもおもしろさを感じていらっしゃるんでしょうか?


「そうですね。もともとHALFBYの初期のコンセプト的なものとして、BPM110のビッグビートやブレイクビーツのうえに、マリアッチみたいな楽しい音楽が乗っかっている、みたいなものはあったので。原点回帰までいかなくとも、ムーンバートンによって気分的にも引き戻されたというか。DJでも最近はハウスや4つ打ちに流れたりしていて、BPM110のレコードはかけてなかったので」


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掲載: 2011年11月09日 18:00

更新: 2011年11月09日 18:00

インタヴュー・文/シャイ川崎