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インタビュー

たむらぱん 『mitaina』



CMソングでも彼女らしいユーモアに溢れたフレーズで最近注目を集めているが、そのポップセンスをより拡張してみせたのが今回のアルバム、みたいな



たむらぱん_A



80年代後期から活動を続けるUKのヴェテラン・バンド、スナッフとの共作によるパンキッシュな“フォーカス”、Dr.kyOnによるファンタスティックなバンド・アンサンブルが楽しめる“ファイト”、斎藤ネコがストリングス・アレンジを手掛けたドラマティックなラヴ・バラード“白い息”、そしてHALFBYがミュージカルを思わせる世界観にサウンドメイクした“ショータイム”——4枚目の新作『mitaina』のなかで、たむらぱんはさまざまなアーティストとのセッションを重ねることで変幻自在のポップ・ワールドをさらに奔放に広げてみせた。

「もともと、ひとりだけで音楽を突き詰めるのがカッコイイとは思ってなかったんですよ。性格的にバンドはやれないんですけど(笑)、バンドへの憧れは強いし、〈誰かと何かをやりたい〉っていう思いは音楽を始めた時からあって。何年かたむらぱんとして活動を続けてきて、もっといろんなことがやれるはずという手応えも感じられるようになってきたし、じゃあ思い切っていろんな人とやってみようと。もうひとつの目的は、自分自身の再確認。いろんな人といっしょにやることで、〈自分はこれでいいんだ〉って思えればいいなって。実際、そういうふうに思えたんですよね。180度世界が変わったんじゃなくて、360度回って、元の場所に戻ってきたというか。もちろん一回転したことで経験値も増えたと思うし、フィギュア・スケートに例えると〈回転不足にならなくて良かった〉っていう感じですね(笑)」。

〈一人でいいと思っていたけど/二人で行くのもなかなかいいわ〉(“ハイガール”)、〈だけど地球に生まれて幸せだった〉(“イェイ”)、〈やれそうなことがあるんだってことを/気付けたならバースデー〉(“そのたびバースデー”)。キュートでポジティヴなリリックからも、彼女の開放的なモードが伝わってくる。特にアルバムのラストを飾る“歩いてる動いてる”における〈僕らは歩いている/奇跡を求め〉は、リスナーの気持ちを根本から励ますような力に満ちていると思う。

「この曲って、実はデビューした頃(2007年)に作ったんですよ。歌詞もまったく変わってないんですけど、いま歌ってもぜんぜん違和感がないんですよね。ちょっと不思議な気もするけど、自分のスタンスがブレてないっていうのが見えるんじゃないかなって。歌詞のテーマとしては、〈何が起きるかわかんないんだから、自分以外のものに頼るのもOK〉っていう感じですかね(笑)。まずは自分でアクションを起こすことが前提だけど、やれることをやったら、神頼みもいいんじゃないか、みたいな」。

『mitaina』というタイトルには、「〈〜みたいな〉を付けることで、深刻さを薄めたい」という思いと、「いろんなものを〈見たいな〉」という願いが重ねられているのだとか。〈こんなことやっちゃいました、みたいな〉といったような軽やかさから生まれる色彩豊かなサウンド、そして現実とファンタジーを自由に行き来しながら、未知の世界を見せてくれる歌。このアルバムを完成させたことで、たむらぱんの音楽はさらに豊かに広がっていくことになりそうだ。

「自分がやってきたことは間違いじゃなかったって思えたことも大きいし、こういうインタヴューでも話したいことがたくさんあるアルバムになって良かったなって思います。やれることはまだまだたくさんあるし、一つ一つ丁寧に音楽を作っていきたいですね、これからも」。



▼『mitaina』の先行シングル“しんぱい”(コロムビア)

▼『mitaina』に参加したアーティストの作品を紹介。

左から、スナッフのベスト盤『Six Of One, Half A Dozen Of The Other』(Fat Wreck)、HALFBYの2011年作『Leaders Of The New School』(SECOND ROYAL)

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2012年01月18日 18:01

更新: 2012年01月18日 18:01

ソース: bounce 339号(2011年12月25日発行号)

インタヴュー・文/森 朋之