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インタビュー

DAISHI DANCE 『beatlessBEST... Mellow Relaxation.』



〈感動できるメロディーを作ること〉を身上とする彼だからこそ実現した、今回の試み。イマジナティヴでリラクシンなビートレス作品集が登場!!



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Limited Express名義の『Party Line』、そしてミックスCD『MYDJBOOTH.2』とフロアに特化した作品が続いた2011年を経て発表される今年第1弾のリリースは『beatlessBEST... Mellow Relaxation.』。その名の通り、ダンス・ミュージックにおいて軸となる〈ビート〉を抜いた楽曲集だ。

「『Spectacle.』までの3枚のオリジナル・アルバムで、音楽制作を始めた頃から思い描いていた構想というか、やりたかったことは表現できたと思うんです。そのあとに自由で実験的な発想で考えていた時に思い浮かんだのがこの試みで、実際に自分の楽曲からビートをミュートしても曲として成立して。そこから他の作品作りと並行しながら2年ほどかけてゆっくり各曲のビートレス化を進めていきました」。

本来あるべき〈ビート〉がない状態でも楽曲として成立する。彼はさらっと言い放ったが、それは簡単なことではない。しかし、それを可能にしたのはひとえにDAISHI DANCEが作るメロディーの強度。彼のストロング・ポイントであるメロディーに、単体でも耐え得るだけの力があるからこそなせるのだ。

「〈感動できるメロディー〉を作ることが普段の制作時における一つの大きなテーマなんですけど、それはビートレスでも同じでしたし、今回の制作も基本的なスタンスはいつもと変わらなかったです。ただ、ビートを外したことでどこか叙情的というか、懐かしい世界観に入れるというか、思い出や旅先の風景が思い浮かんだり、聴いていて想像が膨らむ感じがしたんです。それはオリジナルの楽曲とはまた違う伝わり方、メッセージとして新しいもので、今回はリラックスできるような効果と同時に聴く人のイマジネーションが広がるような、これまでにない作品になったと思います」。

そうしたビートレスな作品集〈beatless...side〉に加え、吉田兄弟とコラボした上海万博日本産業館のメインテーマ“Re...JAPANESQUE”を筆頭に、彼の音楽のエターナル・コンセプトである〈和〉に即した未発表曲や新曲、計6曲を収録したミニ・アルバムも付属。そちらもまた4つ打ちでありながら既存の彼の作品とは幾分異なる仕上がりになっていて興味深い。

計2枚、それぞれから新たな気風を感じさせる本作の後、今夏にはいよいよ4枚目のオリジナル作が控えているという。さらには、メロディーの最終形態——究極の型とも言えるこのビートレス作品の〈その先〉が、彼の頭のなかにはすでにあると言う。それがどんなものなのか大いに気になるところだが、まずは今回の『beatlessBEST... Mellow Relaxation.』——DAISHI DANCEの新たな側面にして、かつ原点のひとつでもある〈メロディー〉へと改めて立ち戻った、そんなオリジン的な要素も併せ持つ作品を楽しみながら、新作と〈その先〉を待とう。



▼文中に登場した作品を紹介。

左から、Limited Expressの2011年作『Party Line』、DAISHI DANCEの2011年のミックスCD『MYDJBOOTH.2』、DAISHI DANCEの2009年作『Spectacle.』(すべてurban sound project.)

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2012年03月07日 00:00

更新: 2012年03月07日 00:00

ソース: bounce 341号(2012年2月25日発行号)

インタビュー・文/杉山忠之