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インタビュー

LONG REVIEW――コトリンゴ『La memoire de mon bandwagon』



コトリンゴ・バンドのサウンドジャーニー



コトリンゴ_J

ピアノとベース、それにドラムス。これらをバンドワゴンに詰め込んで、楽団はまだ見ぬ地平をめざし、旅に出る——そんな映像を喚起するナンバーが繰り広げられるのは、コトリンゴの2年半ぶりとなる待望のオリジナル・ミニ・アルバム『La memoire de mon bandwagon』だ。近年は好評を博した2枚のカヴァー・アルバムの制作、映画への楽曲提供などを展開していた彼女だが、昨年からはソロのほかに、ベース・村田シゲ(□□□、Cubismo Grafico Five他)とドラムス・神谷洵平(赤い靴)を迎えたスリーピース編成でのライヴ活動も精力的に行ってきたので、新たに掲げたアルバムのテーマがズバリ〈バンド〉だというのも、至極当然の流れと納得するリスナーも多いだろう。

フランス語で〈私のバンドワゴンでの思い出〉を意味する『La memoire de mon bandwagon』。そんな本作は、星屑が煌めくが如くエンジェリックな音色から始まって、徐々にピアノやドラム、ストリングス、ピッコロなどが織り重なり、まるでパレードの行進が出発する時のワクワク感にも似たファンタスティックな音世界を披露する“Today is yours”で幕を開ける。南波志帆に提供した“みっつの涙”のセルフ・カヴァーや、〈3.11〉以降に書き下ろされたというポリティカルな歌詞が胸を打つ“Life”、タイトなリズム隊と力強いピアノが織り成すミニマルな展開から一転、白熱したインプロヴィぜーションへと雪崩れ込むジャジーなアウトロがカッコイイ“Ghost Dance”、そしてこのバンドのテーマソングとも言えそうな、賑やかなブラスやメンバー全員の歌声も楽しい“Prologue”という名のエンディング(!)まで、全5曲ながら、コトリンゴのバンドに込めたさまざまな思いがギュッと濃縮された一枚に仕上がっている。

まさにいま始まったばかりのこのバンドは、いったいどこへ行くのだろう? ハーメルンの笛吹きに付いていった子供たちのように、思わず彼らのサウンドジャーニーにお供したくなる、そんな素敵な作品です。


カテゴリ : .com FLASH!

掲載: 2012年03月14日 18:00

更新: 2012年03月14日 18:00

文/aokinoko