インタビュー

赤い公園 『ランドリーで漂白を』



やはりタダモノではなかった! 3か月前のメジャー・デビュー盤とは対照的に、至極〈ポップ〉なチャームを携えた新作でキミを幻惑する、白装束の娘たち!



赤い公園_A



プログレ・バンドさながらの予測不可能な展開をみせながら3〜4分程度の〈ラジオ・サイズ〉で編まれた楽曲構成、変則的なビート、激情を湛えたエッジーなギター、深い情感を秘めた歌声、うねるリズム、ただならぬ熱量、昂揚感──結成から2年足らずのバンドとは思えないほど立派すぎるチャームをもろもろ放ちながら、ライヴハウス界隈をざわつかせている4人組女子、赤い公園。今年2月にミニ・アルバム『透明なのか黒なのか』でメジャー・デビューを果たした彼女たちが、早くも新作『ランドリーで漂白を』を届けてくれた。〈黒〉〈白〉とタイトルに忍ばせていることからもわかるように、これらの作品は対となる世界観を持ったもので、わりとライヴ・バンド的なニュアンスを強調していた前作に対し、『ランドリーで漂白を』は彼女たちが持っているポップネスをより前面に押し出したもの。それこそ〈黒〉に対して〈白〉って言うぐらい、コントラストがハッキリしすぎるほどキラキラした〈ポップス〉を聴かせている。

「歌っていて楽しかったです。ちょっとはモーニング娘。に近付けたかな(笑)」(佐藤千明、ヴォーカル)。

「カナダ・ツアーから帰国して白盤を録ったので、グローバルな感じが出てるかも(笑)」(藤本ひかり、ベース)。

「レコーディングは2回目なので、良い意味で力が抜けてるかな。ちょっとふざけた感じも出てるし(笑)」(歌川菜穂、ドラムス)。

「そもそもメンバー全員、なんでロック・バンドやってるのかわからないっていうぐらいポップスも大好きなんですよ(笑)」(津野米咲、ギター)。

ロマンティックな音色をグルーヴィーに刻むギターとメルヘンチックなコーラスに心躍らされる“ナンバーシックス”、楽しげに表情を変えていくリズムの応酬、その隙間からハッとときめくメロが顔を出す“血の巡り”、うっとりするようなファンタジアを見せる“ランドリー”などなど、「名曲作りたいなあ」としみじみ語るリーダー・津野のソングライティングによって編まれた楽曲群は、あらゆる方向から聴き手のグッとくるツボを刺激してくれる。

「好きなものが多すぎるんですよね(笑)。あのジャンルのあの感じはどうしてああいうふうになるんだろう?とか、それってリズムだったりエフェクターの種類だったり歌い方だったり録音環境だったりっていうものに要因があると思うんですけど、〈あの感じ〉っていうのを具体的に追求していくのが趣味で、それをジャンル関係なくやりたがる。曲作りオタではあるんですよね(笑)。そうやって自分のなかでカチッと構築した曲を、みんなで合わせてみて良い塩梅に崩してもらう、それで丁度良い曲になるんですよ」(津野)。

ロック・バンドという体裁ではあり得ないぐらいポップな楽曲を聴かせる作品とはいえ、いわゆる〈歌謡ロック〉の類ではなく。このバンドが持っている〈棘〉の部分──鋭利な言葉遣いをせずとも、胸に突き刺さってくる言葉選びなど──もしっかりと含みつつ、聴き手に与えるカタルシスは、あくまでも純度の高いロックと同様だ。

「人として、っていうことを考えて歌詞は書いてるつもりです。すっごく生真面目だと思いますよ、私の歌詞は。文学って感じとも違って、むしろ遊んでるほうだと思います。尖ってることを言ってるわけでもないし、曲もそうですけど、わりと穏やかな気持ちで作ってます。救われるために曲を書くことはないし、〈なんだろなあ……〉って感じで作って、次の日に聴いて〈結構いいじゃん!〉って、そういうのがずっと続くのがいいなあって思いながら作ってます」(津野)。

そんなリーダーの頭のなかを日々巡っている音楽は何なのか? 続きは別項のコラムを参考にしていただきたし。



▼赤い公園のファースト・ミニ・アルバム『透明なのか黒なのか』(EMI Music Japan)

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2012年05月09日 00:00

更新: 2012年05月09日 00:00

ソース: bounce 343号(2012年4月25日発行)

インタヴュー・文/久保田泰平

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