インタビュー

〈Nothing's Carved In Stoneサウンド〉の背景に透かしてみたいもの



かつて、バトルスの面々は名曲“Atlas”に関するインタヴューのなかで〈シャッフルがテクノを通過してまたロックに戻ってきた時、どんな感じになるんだろう?というアイデアが元にあった〉と語っていたが、本文の生形の発言にある通り、そうした方法論はNothing's Carved In Stoneにも通じるものだ。リズムや音色の観点から現場で聴いていた作品を訊ねたところ、ケミカル・ブラザーズやイパ、ウォッシュト・アウトなど、フロア・ユースなものからベッドルーム・ポップまでさまざま挙がってきたが、そうした着眼点は、メンバー各々が発するミニマルなリフが合体して複雑なリズム・パターンを走らせるという楽曲構成や、自身の使用楽器を駆使したユーモラスな音響アプローチへと繋がっている。そんなリズム/音響/構成といった意味では、海外勢で言えばミュートマスの初期作品、日本のシーンでならLITEやtoeなどのインストゥルメンタル・バンドたちに共通項を見い出せるだろう。また、今作であれば“PUPA”などのプリミティヴなリズムによるダンス・ミュージックへの接近の仕方には、フレンドリー・ファイヤーズの諸作と近い匂いを感じ取ることができる。

一方で、村松の伸びやかなヴォーカリゼーションと美しいコーラスワーク、テクニックを擁する彼らだからこそのダイナミックな曲展開といったエモ+プログレといった要素も〈Nothing'sサウンド〉のキモであり、それはアット・ザ・ドライヴイン〜マーズ・ヴォルタやフー・ファイターズなど、ポスト・ハードコア/グランジの王道の流れと共鳴するもの。これらの配合バランスの妙が、Nothing's Carved In Stoneの熱すぎず冷めすぎない、ソフィスティケイテッドなエモーショナル・ロックを形成している。



▼関連盤を紹介。

左から、バトルスの2007年作『Mirrors』(Warp)、ウォッシュト・アウトの2011年作『Within And Without』(Sub Pop)、フレンドリー・ファイヤーズの2011年作『Pala』(XL)、ミュートマスの2008年作『Mutemath』(Warner Bros.)、マーズ・ヴォルタの2012年作『Noctourniquet』(Warner Bros.)、フー・ファイターズの2005年作『In Your Honor』(RCA)

 

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2012年10月01日 18:45

更新: 2012年10月01日 18:45

ソース: bounce 347号(2012年8月25日発行)

文/土田真弓

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