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インタビュー

大坂昌彦

さりげない最先端ドラマー、大坂昌彦のアップデート盤

8月8日に8枚目のリーダー作『Assemblage』を発表した大坂昌彦は、一貫してアコースティックなサウンドを基調とする音楽を指向してきた。20代の頃にはエレクトリックな音楽にも関わり、フュージョンのレコーディングにも参加していたが、ある時期からアコースティックなものを指向するようになり、特にここ10年ぐらいは、エレクトリック・ギターはともかく、シンセサイザーなどの電子楽器はあまり好まなくなったという。

ジャズはアコースティックかエレクトリックかという、その発端からすでに不毛だった論争をここで再燃させるつもりはない。バンド・リーダーとして作曲も数多く手がけてきたトータル・ミュージシャンである大坂が、アコースティックを指向するようになったのをきっかけに、「昔はシンセサイザーやシーケンサーを使っていた作曲の作業を、アコースティック・ピアノだけで行うようになった」というところにこそ、彼の音楽を理解する鍵が隠されているように思うのである。

「(シーケンサーやコンピュータを使用した)打ち込みで作曲すると、不自然な音の動きでも出来るんですよ。だけど、自分が音楽としてピアノで弾ける、つまり、自分の中で不自然じゃないものの方が大事だと思うんです。ハーモニーにしても、やはりシンセサイザーのハーモニーでは響かなくて、生ピアノで作った方が、楽器が補ってくれる部分もあってより響くということもありますね」

過去のリーダー作の多くと同様、新作も曲の大半が大坂のオリジナルだ。「世界の動向を常に気にしている」という彼は、アップデートされた情報を盛り込み、自然に聴こえながらも変拍子だったり、どことなくエスニックな色合いを帯びていたりする曲を書いている。にもかかわらず、最先端を意識することからくる、肩ひじ張ったような印象はない。

「自分で弾けることや、自分が歌えることを重視して曲作りをしていることにも、そういう印象を受ける理由があるかもしれません。ピアノ・トリオでやっている《Once, Twice》なんかは、自分がつたないピアノで弾いても大丈夫なように書いているので」

昨年から固定メンバーでライヴ活動してきたユニットによるレコーディングで、ほとんどがファースト・テイクという『Assemblage』は、“最先端”という“爪”を隠した、“能ある鷹”による、自然な響きの作品なのである。

LIVE INFORMATION
『「Assemblage」発売記念ツアー 』

9/28(金)19:30開演 会場:御茶ノ水NARU
http://www.masahiko-osaka.com/

カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2012年08月27日 12:11

ソース: intoxicate vol.99(2012年8月20日発行号)

取材・文 坂本信