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インタビュー

STARDUST REVUE 1981-2012(Part.4)



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[ interview ]

4週に渡ってお届けしてきたSTARDUST REVUEの超ロング・インタヴューもいよいよ最終回。今回は、3年ぶりにリリースされるオリジナル・アルバム『B.O.N.D.』について。

2011年5月にデビュー30周年を迎えた彼らは、約1年4か月をかけて全国66か所73公演にも及ぶ〈STARDUST REVUE 30th Anniversary Tour『30年30曲(リクエスト付)』〉を敢行。終了後、地元であるさいたまスーパーアリーナにて、元メンバーの三谷泰弘や光田健一らを迎えてスペシャル・イヴェント〈STARDUST REVUE 30th Anniversary オールキャストで大謝恩会~5時間程度まったりと~おみやげ付き〉を実施した。

大いに盛り上がったお祭りからさほど間を空けずに届けられた新作は、スタレビのスタレビたる所以がたっぷりと詰まった内容に仕上がっている。そんなアルバムは、いったいどのようにして作られたのか?



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人と繋がりたいから音楽を作っている



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――新作『B.O.N.D.』を聴かせてもらった率直な印象として、温かい曲が多いな、と。

「実は4月に30周年記念ツアーが終わって、5月にさいたまスーパーアリーナで集大成イヴェントをやったから、ひと休みしてからまた来年ぐらいにツアーだろうと思っていたんです。ところが〈9月にアルバムです〉って言われて(笑)。〈それは無茶だろ〉って言ったんだけど、〈10月にはツアーが始まりますから〉って。それで普通なら2、3週間の曲作り期間をもらうんだけど、とにかく1週間ほどで書き上げて。でも結果、結構おもしろい曲が書けたんです。そんな時、スタッフが〈この曲をレコーディングしたいんです〉ってこれまでに書いたシングル曲のストックをいくつか持ってきてくれて。そのなかに〈お、これピッタリじゃん!〉っていうのが見つかったんです。結局作曲期間は短かったけど、おもしろい楽曲はすでに十分あったんですよ。僕ね、シングルの曲を書く時、いつもシングルとは逆の曲をいっしょに作るんです。ロックンロールっぽいものを書いたらバラードを書いたり、当然その逆も。そういう曲って、ちょっとマニアックで、まさにアルバム向けだったんですよね。今回は新曲とそのストック曲を混ぜて、イメージを広げて、足りないぶんはスタジオで作ろうってことでレコーディングに入りました。特に1曲目のアカペラ曲なんて、レコーディング中に、早くツアーに行きてえな……と思って作ったものです」

――早くも(笑)。

「うん(笑)。今回のアルバムは色の濃い曲が多いから、〈いかにもスタレビ〉って感じの安心できるオープニング曲が必要だなって考えていた時に、アカペラを思いついたんです。で、思い出したのが前作『太陽のめぐみ』のツアーでやってた〈ご当地アカペラ〉。各ライヴ会場で即興のアカペラを作ったんです。例えば、宇都宮だったら〈ギョウザ~日本一〉とか、ご当地の名物や名所を使って僕が即興で歌にして。で、あらかじめ作っておいたサビのコーラスに繋ぐって感じの。その前半が、〈君の街にツアーに行くよ〉って歌詞の曲になっただけ。それでも、ツアーに来てくれた人は〈あ、あの曲だ〉って思い出してくれるんじゃないかな。最初は〈Can you hear The Music〉ってタイトルだったんだけど、日本語のタイトルがいいなってことで“は・じ・ま・る・よ”になりました。これからツアーに出発するよ、そしてこのアルバムがまさにプレゼントだよ、って思いを込めてね」

――ところで、タイトルの意味は?

「タイトルを考えていた時にいちばん意識したのは〈3.11〉の震災だった。30周年ツアーに入って3公演目の前日。そりゃもう考えましたよ。〈何のために音楽をやるんだろう〉〈誰のために音楽を作るんだろう〉って。結局ツアーも1か月休んで。で、6月にツアーを再開させて、7月に福島の須賀川に行ったんだけど、僕らがステージに出て行った瞬間、ウワ~!ってものすごい歓声が上がった。いつもは郡山で、その西の須賀川は初めてだったんだけど、あの歓声を耳にした時、ああそうか、彼らは楽しくて叫んだことはしばらくなかったんじゃないか?って思ったんです。きっとあの歓声は生涯忘れないと思う。僕は、子供の頃からひたすら音楽を愛して、音楽を作ってきたんだけど、あの震災以来、音楽の向こう側に伝えたい人の顔が何となく見えるようになったんだ。被災した人だけじゃない、人は毎日いろんな状況で過ごしてるわけで、そんななか、俺たちの音楽をどんなふうに聴いてくれるのかな、って思うようになった。俺が音楽を作るのは人と繋がりたいからだ、って気付いたんです。その思いを周りに伝えたら、スタッフから絆や繋がりという意味で〈BOND〉って言葉が出てきて。で、確かに俺たちがいま言いたいことはこの言葉に間違いないんだけど、ダイレクトに〈BOND〉じゃつまんない。そうだ、〈B〉には〈B〉の、〈O〉には〈O〉の意味がある。それで受け取った人が省略記号を見て、そこに何が隠れているのか読み取ってくれるようにお任せしようと。こちらが説明するのではなく、みんなが何か考えてくれたらいいな、と。でね、僕が考えたのは〈BAND OF NEW DAY〉。そんなふうにいろんな思いを想像してほしかった」

――歌詞が優しく響いてくるところが本作の良さだと思っていて。しっとりとした雰囲気を醸す“Rainy Waltz”はとりわけ優しいですね。

「“晴れのち雨時々曇り”も雨の歌だし、このアルバムは雨の歌が結構ある。それは、梅雨時に作ってたからです(笑)。でもあの時期、そういう気持ちだったんですよね。雨が降っているから晴れを望む。そもそも両方とも不可欠なものじゃないですか。辛いことや暗いことについつい目をつむりがちになるけども、僕は〈3.11〉以降、そういうことって絶対あるよなと思うようになった。それでも困難と戦って、必ず乗り越えてきたじゃないかと。“Welcome To The Jungle”の歌詞も、〈俺たちまだ行くぞ!〉っていう宣言。あれは僕が中学生の頃、初めて東京へ輸入盤を買いに出てきた時の印象で書いた。駅を出たら信号がいっぱいあって右も左もわからない、いったいどこに向かえばいいんだ?って。それでも、地図はなくても目的はある。〈レコードを買いたい〉っていうね(笑)。つまり、目的さえあれば歩き出せるはずって歌なんだよね。震災によって日本のスタンダードは崩れちゃって、もしかしたら目の前に広がっているのはジャングルかもしれない。でも俺たちはその道をちゃんと歩いて行かなければ、何にもなくなっちゃうぞ、と言いたくて。同時に、スタレビがもっと新しいことをやっていきたいという表明でもあるんです」


カテゴリ : .com FLASH!

掲載: 2012年09月12日 16:00

更新: 2012年09月12日 16:00

インタヴュー・文/桑原シロー