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インタビュー

INTERVIEW(2)――自分が作ったものに負けるのだけは嫌



自分が作ったものに負けるのだけは嫌



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――この新作は、スタレビの楽曲の普遍性について再認識させられたアルバムでもありますね。先行シングル“今日もいい日でありますように”を聴いた時、ラヴィン・スプーンフルの楽曲を彷彿とさせるような甘酸っぱさがあって、すごくトキメキを覚えたんです。同時に、こういうポップス好きのツボを突いてくる曲をさらっと提示してくれるバンドって最近いないよな~って気持ちになって。

「ハハハ、ラヴィン・スプーンフルとは予期せぬ名前だったねえ。確かにあのバンドを一言で言うのは難しいけど、コーラスを交えたポップさはとても気に入ってます。でも最近ふと気付いたら、そういうポップスを作るバンドがいなくなっちゃってる気がしますね。ソロの方ではいるのに、なんでバンドはいなくなっちゃったんだろう? ひょっとすると、ヒップホップの言葉のスピード感にメロディーが駆逐されちゃったのかもしれないね(笑)」

――ポップスってやっぱり作法とか様式美を大事にしてもらいたいところがあって、やっぱギターは派手に決めてくれなきゃ!とかいろいろと要求をしたくなっちゃうんですよね。

「やっぱね、ポップスってそれなんですよ! 基本は聴いていてワクワクするような曲じゃないとね。ラヴィン・スプーンフルだってさ、“You Didn’t Have To Be So Nice”と“Summer In The City”じゃ全然テイスト違うけど(笑)、こんな美味しいメロディー書かれちゃったら、もう〈参りました〉だよね。やっぱり普遍的なメロディーってあると思うし、ポップスってそれをどうオリジナルに料理するかがキモだと思うんだ。僕がやりたいことは、大人も子供も〈あ、これ初めて聴いたけど、何か懐かしい感じがする〉って思える曲を作ること。それはきっと、例えば“十七歳の地図”(尾崎豊)みたいに、17歳の人のバイブルとなるような曲にはなれないかもしれないけど、もしかしたらカーペンターズの名曲のように自分の宝物となることはあるかもしれないじゃない? そんな曲が作れたらいいなって最近は思うんだよね。もともと歌詞もわからずに洋楽にハマった僕は、メッセージよりメロディーから始まってるからね」

――こういう言い方は大変失礼ですが、ディスコグラフィーを振り返ってみると、STARDUST REVUEは常にアヴェレージ・ヒッター的なスタンスで活動してきたんだなと思わずにいられないんです。自分たちをいっそう大きく見せるようなホームランを決して狙っていないというか。

「そう言ってもらえるとありがたいけど、結果としてそうなっちゃっただけですよ。だって、常にホームランを打ってるすごい才能を周りでたくさん見てきたから。勝てるわけがない。だけど、バンドだから自分たちの才能の足りない部分はみんなで補えばいい。だから前作よりいいものを作ろうっていつも思ってます。僕は自分が作ったものに負けるのだけは嫌なんですよね(笑)」

――負ける……ですか?

「例えば、シングル曲を作ろうとしたとする。で、締め切りもあって、僕が作ったものがスタッフ評価70点の出来だったとする。そこでスタッフから、もう少し期間をあげるから再度チャレンジしろ、と言われたならば、僕は〈できない〉って言うと思うんだ。そもそも締め切りを決めたのはあなただし、僕ががんばってこの期間に作り上げた曲はこれなんだ、これしかないんだと。ダメならば出すのを止めようと答えると思う」

――そうかあ。それって要さんの職人気質的な性格と言えるものなんでしょうか?

「う~ん……単純に嫌な思いをしたくないだけ(笑)。だって、本当にがんばってるんだもん。決して適当に作ったわけじゃない。それでこの結果なんだからしょうがない。きっと切羽詰まって良い曲を書く人もいると思う。でも僕は絶対に違うよ。僕をそういうふうに追い込んだら何もしなくなっちゃうから。僕は僕に与えられたもののなかでやる。だからね、この30年間、STARDUST REVUEのスケジュールを移動させたことってないんです。アルバムのリリースを延期したこともない。いままで1900ぐらいやっているライヴも自分たちの事情で飛ばしたことは一度もない。僕らはそういう意味で買い手市場を前提にして作っている。お客さんに告知したなら、何が何でもその日までに間に合わせる。個人的な考え方はいろいろあるかもしれないけど、物を作るのに十分な時間、期間を与えられたのなら、そこでやらざるを得ないんだよね。なぜなら、それが職業だから。あのね、僕は自分のためだけに音楽を作ってない。絶えず念頭に聴いてくれる人を置いて、自分のやりたいこととお客さんの聴きたいであろうことを照らし合わせてる気がするんです」

――はい。

「だから僕は決して芸術家じゃない。芸術家って創作心の赴くまま、たとえ誰にも聴かれなくても自分自身の化身として作品を作ってるような気がする。それに対して、僕にはいつも聴いてくれるであろうお客さんが存在している気がする。〈あなたが音楽を止める時はどんな時?〉って訊かれたら、〈聴いてくれるお客さんがいなくなったら〉って答える。それは本当にそう。とにかくお客さんの前でライヴがやりたくてしょうがないという気持ちだけは変わらないと思う。物理的に歌えなくなるという理由ならともかく、自分が歌える限りは続けるだろうね。職業として音楽を本気で作っているから、そこにお客さんがいなくなったら、もうしょうがない話だもん」



カテゴリ : .com FLASH!

掲載: 2012年09月12日 16:00

更新: 2012年09月12日 16:00

インタヴュー・文/桑原シロー