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インタビュー

LONG REVIEW――雅-MIYAVI-『SAMURAI SESSIONS vol.1』



意外な発見や新たな可能性を生み出した刺激的なアルバム



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<対戦型コラボレーション・アルバム>というキャッチコピーの通り、その活動のすべてに〈バトル〉という概念を貫く雅-MIYAVI-らしいアルバムだ。とはいえこれはあくまで〈愛あるバトル〉で、互いに秘めた未知なる能力をどこまで引き出せるか?がカギとなる。さあその勝敗はいかに?

まずオープニング曲となるHIFANAとの“GANRYU”は、ギターとサンプラー&プログラミングという対戦で、雅-MIYAVI-はパーカッシヴな奏法、HIFANAはパーカッションを交えたサウンドを特徴とするだけに相性は抜群。持ち味を十分にぶつけ合った好勝負だ。続いてはこの〈SAMURAI SESSIONS〉の第1弾として先行シングルとなったKREVAとの“STRONG”。ドラムス=BOBOの叩き出す超速ビートに乗せたファンキーなギター・プレイが冴え渡るこの曲は、表題の通り〈強さ〉をテーマにした歌詞となっている。完全に雅-MIYAVI-を意識したものだと思われ、KREVAのナンバーではあまり聴けないストレートでストイックな言葉選びがおもしろい。同じく先行シングルとなった、フレンチ・エレクトロ界を引っ張るユクセクとの“DAY1”は、おそらくギターをサンプリング&エディットしてサウンドに取り込むことで、対戦というより両者が一体化したような、スムースなグルーヴが楽しめる。

さらに“SILENT ANGER”は細美武士(the HIATUS)の持つ多様な音楽性の一面が強く出た曲に。シロフォンのような音色のミニマル・フレーズが通奏低音として鳴り響くなか複雑なリズムが刻まれ、スペイシーな空気が広がる中盤以降は4つ打ちへと展開。叙情的でメランコリックなメロディーと、繊細な細美のヴォーカルが素晴らしい。また、H ZETT Mとの“PLEASURE!”は、ディストーションの効いたギターとピアノとの掛け合いがジャズのインプロを思わせる、アルバム中でもっとも〈バトル〉を感じさせる曲のひとつだ。が、サビのメロディーは驚くほどポップなもので、これは絶対にH ZETT Mの曲だ!と思ってクレジットを見たら、実は雅-MIYAVI-によるもの。彼が新しい扉を開いた曲として重要だろう。

そして次に登場したのが本作の白眉と言える、三味線の上妻宏光とフラメンコ・ギターの沖仁を迎えた“HA NA BI”。左チャンネルに三味線、右にフラメンコ・ギター、真ん中に雅-MIYAVI-のアコギがそれぞれずっとソロ・パートを弾いているような驚くべき構造で、激しさよりもなぜか静けさと叙情を感じさせる和風の曲調が非常に味わい深い。続くラストは、本作でユクセク曲以外のすべてのナンバーでプロデュースを手掛けた亀田誠治がベースを担当し、坂本美雨と雅-MIYAVI-がデュエットしたメロディアスな“祈りを”。普通にアコギを弾いても巧いんです……と主張するように雅-MIYAVI-の繊細で美しい爪弾きが光る、三拍子の穏やかなグルーヴでアルバムは静かに幕を閉じる。

結論、これはリスペクトと愛に満ちたバトルが、意外な発見や新たな可能性をいくつも生み出した、極めて刺激的なアルバムだ。第2弾がぜひ聴きたい。次は海外アーティストばかりでもいいんじゃないか?



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掲載: 2012年11月14日 16:30

更新: 2012年11月14日 16:30

文/宮本英夫