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インタビュー

flumpoolが描くポップでエモーショナルな世界観を華麗に変換させてきた正体不明のプロジェクト──Red Dracul Scar Tissueが、Jazztronikを迎えて作り上げたクールかつスタイリッシュな新提案!



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flumpoolのニュー・アルバムと併せて毎回発表されているのが、正体不明のプロジェクト=Red Dracul Scar Tissueの名を冠したリミックス作品。今回も6曲入りのリミックス・アルバム『experimental』がflumpool『experience』と同日にタワーレコード限定でリリースされる。ただ、この『experimental』がこれまでと異なるのは、実際のリミックス・ワークをJazztronikこと野崎良太が担当していること。「〈スモーキーなジャズ〉がテーマにあった」(野崎:以下同)ということで、flumpoolの熱くエモーショナルなバンド・アンサンブルが、野崎らしいクールでスタイリッシュなサウンドへと換骨奪胎されている。それにしても、ジャジーなflumpool──まるで仕上がりがイメージできないかもしれないが、そんな大胆な組み合わせが、ここではなんの違和感もなく見事に成立してしまっているのだ。

「制作に取り掛かる前は少し不安もありましたが、メロディーがいい意味でポップなので、自由な発想でいろいろアイデアが出てきました。flumpoolはコード進行が凝っていておもしろい曲が多いですね。すごく丁寧に音楽を作っているんだなと思いました」。

取り上げているのは『experience』に収録されているシングル5曲と、アルバム未収録のシングル“Present”。いずれの楽曲もヴォーカルに寄り添う流麗なアンサンブルが丁寧に積み重ねられており、何も知らずに聴いたら、これがオリジナル・ヴァージョンだと思ってしまうかもしれない。そのへんは、クラブ・ミュージック発のプロデューサーながら生楽器の扱いに長け、ポップ・フィールドの仕事も多い野崎の面目躍如といったところだろう。

「通常の〈リミックス〉とは異なり、リアレンジに近いものになったかと思います。実際の作業はピアノとドラムを打ち込み、ブラス、ベース、ギターは生楽器に差し替え、歌のことも意識しながら進めました。打ち込みのピアノとドラムも、他の楽器と馴染むような質感を出すことを心掛けましたね」。

各曲をざっくりと紹介すると、“Answer”は重心の低いビートを主軸にしたファンキー・ジャズ、“Because... I am”はブラジリアンな高速チューン、“証”はフュージョン風味のドラムンベース、“どんな未来にも愛はある”はたおやかなボサノヴァ、“Touch”はエレピとトランペットが浮遊するダビーなナンバー、そして“Present”はシャッフル・ビートのラウンジ・ジャズ……という具合で、アプローチは実にさまざま。「原曲のテンポ感を変えず、6曲それぞれに個性を持たせることを念頭において制作しました」とのことで、ジャズをキーワードに足並みを揃えつつもヴァリエーション豊かなサウンドが詰め込まれている。総じてオリジナル作品とはまったく異なる音世界が堪能できる一枚だが、唯一オリジナルのままなのが、山村隆太のヴォーカルであり彼らのメロディーだ。その抜きん出てキャッチーな吸引力を浮き彫りにする作品であるとも言えるだろう。


カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2012年12月25日 14:30

更新: 2012年12月25日 14:30

ソース: bounce 350号(2012年11月25日発行)

インタヴュー・文/澤田大輔

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