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インタビュー

挾間美帆

©Miho Aikawa

ジャズ作曲家宣言しちゃいます!

挾間美帆、はざま・みほ、ご存知だろうか。

まずはこれを視聴してみよう。本人のHPではアルバムに収録されているタイトル曲《Journey to Journey》、そのヴィジュアル・ミュージック・アニメーション。映像と音楽が連動したかたちで楽しめる。

東京オペラシティで山下洋輔プロデュースの「ニューイヤー・コンサート」に、山下氏の秘蔵っ子アレンジャーとして登場したのが2008年。しばらくはNY滞在のためご無沙汰だったが、あらためて初のリーダー・アルバムのリリースと、「ニューイヤー・コンサート」での主役として登場することになった。文句なしの晴れ舞台。しかしそれだけの力を備えているのは、音を聴けばすぐわかる。

コンサートのタイトルには「挾間美帆のジャズ作曲家宣言」とある。「ジャズ作曲家」との呼称への違和感。しかも「宣言」である。

アルバムを聴けばたしかに「ジャズ」なのである。なぜ、わざわざ「ジャズ作曲家」と言わなくてはならないのか?

持ってきてもらった2曲のスコアをみると、インプロのソロ以外の部分はじつにしっかり書きこまれている。ジャズといわれるとインプロ、即興と結びついてしまうことが多いが、ここにあるのは文字どおり「構成」された、composeされたものだ。

「『あなたはあなたのアイデンティティを使って出来る音楽を作るべきで、それをそのまま続けなさい』と言われ続けて、卒業するまでには自分のバンドの編成とか、作りたい音楽の方向性とか、『これが自分のやりたかった音楽だったんだ』という風にすることは出来たんです。ただしかし、それを録音して持って帰り、『じゃ、これが挾間の音楽なので、どうぞ』って言っても『挾間、誰?』だし、『この音楽は、何?』ということになってしまう。だから分かりやすい言葉で代弁するために、まずは、ベースとドラムがいて、それからインプロヴィゼーションするセクションがある、というその二つの要素から〈ジャズ〉というのが一番分かりやすい。というところで、この結論に。〈ジャズ作曲家〉と言うと、みんなには『ジャズっぽいけど作曲する人なんだ』って分かってもらえるかな、と」

東京オペラシティのコンサートは?

「前半は山下さんの曲をオーケストラに、後半は私の曲となります。松井守男さんの絵画にインスパイアされた山下さんのアルバム『Canvas In Quiet』から、色をテーマにした楽曲を7つ選び、弦楽合奏とピアノのためにオーケストレーションしたのが第一部。対して、この『耳をすますキャンバス』(『Canvas In Quiet』)という題名が素敵だったので、今度は自分が感覚を研ぎ澄ませるような、空間で何か表現出来ると良いなと、形とか、柄とか、そういうものにインスパイアされた楽曲を、オーケストラと山下さんのピアノ、そして時々わたし自身のピアノというかたちで、考えてみました」

アルバム『Journey to Journey』のひびきについて。

「もともとクラシックの作曲を勉強してきたので、オーケストラの音に一番馴染みがあるんです。自分が作る場合でも、オーケストラへの衝動がある。なので、ストリングスは大前提でした。で、トロンボーンよりホルンの音が必要、というのも大前提(笑)。あとは、やっぱり個々のミュージシャンの存在ですね。三人のサクソフォンに頼んだら、ベース・クラリネット、クラリネット、フルートの持ち替えがみんな大変うまかったので、こういう音を書くことが出来るという、広がりが生まれたのは大きかった」

譜面にきっちり書かれていてもしっかりスゥイング感、ドライヴ感がある。

「自分の曲をジャズっぽく聴かせるためには、良いドラマーが不可欠です(笑)。このアルバムで演奏してもらったベーシストとドラマーは偶然にも大学で出会って、二人なしにはこのバンドは成り立たない、と言うくらいこの二人の音とグルーヴを愛しています。自分のバンドならば、良い演奏を引き出すためにも自分の責任でミュージシャンをプロデュースするのが、作曲家の正しい仕事だと思いますね」

LIVE INFORMATION
東京オペラシティ ニューイヤー・ジャズ・コンサート2013
山下洋輔プロデュース「挾間美帆のジャズ作曲家宣言!」

1/11(金)19:00開演
曲目:
[第1部]山下洋輔(挾間美帆編曲):Selections from "CANVAS in QUIET"
[第2部]挾間美帆:Suite "Space in Senses"(世界初演)
出演:挾間美帆(作・編曲、P、指揮)東京フィルハーモニー交響楽団  山下洋輔 (プロデュース、P)
会場:東京オペラシティ コンサートホール
http://www.operacity.jp/

カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2012年12月17日 13:13

ソース: intoxicate vol.101(2012年12月10日発行号)

取材・文/小沼純一(早稲田大学教授/音楽・文芸批評)