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インタビュー

INTERVIEW(3)――24歳で何がわかんねん



24歳で何がわかんねん



泉沙世子_Asub2

――その“境界線”は映画「さよならドビュッシー」の主題歌になっていますが、これは楽曲が出来上がってから決まったものだったんですか?

「私はふだん歌詞のテーマとかキーワードをメモするようにしていて、“境界線”もいま言ったようなテーマがふんわりとあったんですけど、映画の話をいただいたことでさらに膨らんでいった感じなんです。苦しい環境だけど周りの人に頼れないっていう主人公の孤独感とか寂しさっていうものに、当初のテーマがリンクしたというか」

――ご自身で〈ここは聴かせどころ〉思っている部分はどこですか?

「シンプルにサビの歌詞を聴いてほしいですね。ひとつひとつ心を込めて選んだ、替えが効かない言葉たちです。たったひとりの〈あなた〉に歌っています」

――一方、カップリングの“アイリス”は、臆せず前に踏み出さなきゃ……という、自分自身を奮い立たせることが詞のテーマになっていますね。

「等身大の女の子の気持ちを書きました。コンプレックスを抱えながらも、夢や恋を手に入れるために一歩ずつ前に進もうとがんばってる女の子のためにです。サビは合唱してもらえたらいいなと思って作りました。歌いながら前向きな気持ちになってもらえたら嬉しいです」

――そういえば、さきほどピンク・レディーの話が出ましたが、音楽の原体験はどんなものだったりするんですか?

「父親が音楽好きで、その時々でブームがあって、私が物心ついた頃にはユーミンさんの曲がよく流れてましたね。それからフォルクローレとか南米の音楽だったりとか、ジャズだったりとか……いまは演歌みたいです。それと、父は楽器の演奏が趣味で、ギターとかトランペットとかピアノとか、あとは尺八とかケーナとか、とにかくいろんな楽器を演奏していたので、音楽が身近にあった環境ではありましたね」

――かなり雑食だったんですね。

「でもまあ、私の根本にあるのは、少し古いもの、それこそ昭和の香りがするものだったりとか、そういうのが好きなんだろうなって」

――生まれる前の音楽ですよね。

「私自身、昭和マニアとか昭和大好き!っていうわけではなく……なんか、高円寺の古道具屋さんで〈この振り子時計可愛い!〉とか、あと、ちゃんちゃんこが好きだったりとか(笑)、なんで好きなんやろうって思うんですけど、〈それは昭和の時代のものだよ〉って言われて気付くというか、そのぐらいの感覚なんですね。両親の影響で70年代の曲を聴いて〈いいなあ〉って思ったり、なんていうか、懐かしさとかせつなさみたいなものに心が掴まれるんですよね」

――当時を知ってて懐かしむっていうのではなく、知らないんだけどなんか掴まれるという。

「そう、そういう音楽ってパワーがありますよね。生まれる前の音楽なのに不思議やなあって。なんでなんですかね」

――泉さんの音楽には、いわゆる〈昭和〉な匂いはあまり表れてないですよね。

「ライヴでやってる曲のなかには、それっぽいものもあるんですけどね。〈ホンマに自分で作ったん?〉って言われるような曲もあったりするので、たまに天然で出てくることもあるんですよ」

――まあ、いろんなエッセンスがまだまだ生まれてきそうですよね。

「そうですね。いまはあまり限定しすぎずに……よく〈らしさ〉とかについては考えるんですけど、全部自分から出てきたものなので、あまり抑え込むのももったいないような気がして。24歳のデビューっていうのはそんなに早くはないですけど、逆に〈24歳で何がわかんねん?〉っていうところもあると思うんですね。だから、出せるものや伸ばせるものを全部出したうえで、私はこれがやりたいなっていうものを徐々に絞っていきたいと思っています」


カテゴリ : .com FLASH!

掲載: 2013年01月30日 18:01

更新: 2013年01月30日 18:01

インタヴュー・文/久保田泰平

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