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インタビュー

長富彩

カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2013年03月05日 19:36

ソース: intoxicate vol.102(2013年2月20日発行号)

取材・文 山野雄大

ホロヴィッツの愛奏した楽器と、深く自然に共鳴する

感性に衝き動かされるように──長富彩のレコーディングは一筋縄ではいかないところが凄いらしい。録音チームが優れた成果にOKを出しても、本人は〈いや、これは違うと思うんです〉と理想のイメージに達しない限り納得はしないので、テイクを重ねてもどこが着地点なのか、達するまでは見えてこないとか。「それを論理的に説明するのは難しいんですよね…」と彼女は明るい声で少し照れるように笑う。

1986年生まれ、ハンガリーのリスト音楽院への留学とアメリカでの活躍を経て2010年に『イスラメイ──100年の時を経て蘇る、ピアノの黄金時代』でCDデビュー、翌年の『リスト巡礼』ともどもヴィルトゥオーゾ作品に冴えた感性を磨いてきた。「人との関わりが得意な方ではなくて、気持ちを表現する手段がピアノしかない、と思ってきました。演奏には自分の感覚を反映させて爆発させるタイプなんです」

そんな彼女の3枚目『レゾナンス〜ホロヴィッツ・トリビュート』は、タイトルの通り20世紀の名匠ウラディーミル・ホロヴィッツとの共鳴というべき、これまた鋭敏芳醇な感性のほとばしる一枚になった。──しかも、巨匠の愛奏していた1912年製ニューヨーク・スタインウェイ「CD75」という銘器を弾いているのだ。「この楽器に出逢って初めて“このピアノが好き!”って思えたんです」と彼女の感性にもぴたりと響いたこのピアノ、「おこがましいですが、ホロヴィッツがこの楽器と恋に落ちた気持ちが良く分かりました。タッチが浅く、演りたい音色がそのまま出せる。触って困ったことが一度もない。逆に“ピアノが良くなかったから”という言い訳もできません(笑)」

ブックレットに楽器の来歴や音色の特徴など興味深い文章が各種載っているのでぜひお読みいただくとして、ホロヴィッツが愛奏した作品を彼の楽器で弾くという今回のこの挑戦も、若き長富は自らの感性を綿密に音化しきって見事なものだ。ショパンやスクリャービン、そして彼女も「〈豪華な寂しさ〉が溢れ出している」と熱愛するラフマニノフにも、発音から余韻まで十全にコントロールされた(そして感覚の豊饒を自然に響かせる)音楽が満ちる。「ホロヴィッツのイメージが浸透しているスカルラッティは選曲にも勇気が要りました(笑)。でも〈CD75〉の良さが一番良く出ていると思ったのがこれ。普通と違う、ホロヴィッツのスカルラッティの音が自分の中で鳴ってる!と」

ここ数年「自分の殻を破って来られました」と語る長富、銘器を呼吸するように理想を響かせた新譜には、覇気と可能性も鮮やかだ。

LIVE  INFORMATION
『長富彩 ピアノリサイタル』
3/9(土)神奈川県民ホール小ホール(横浜)
4/6(土)宗次ホール(名古屋)
http://www.ayanagatomi.com/

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