インタビュー

livetune feat. 初音ミク 『Re:dial』



フロアライクなポップソングでボカロから生身の歌い手までを輝かせるトラックメイカー。その次なる一手は?



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幼い頃からピアノを習い、バンドではドラムを叩く一方、ゲームの「beatmania」経由で打ち込みを学んだというkz(livetune)。では、livetuneとしての雛形はどのように出来ていったのだろうか。

「ポップソングを作ろうと思ったのは大学に入ってからです。元気ロケッツとかダフト・パンクが自分にフィットしてたし、当時はジャスティスみたいなエレクトロニックなヴォーカルものが流行っていたので、そういうのを年に1〜2曲作ってました。いまアップアップガールズ(仮)のプロデュースをやってるfu_mouと2人でも活動していて、そこで自分たちの声にオートチューンをかけてライヴをやったりしてたんですね。それであるとき、〈VOCALOIDっていう声が鳴るシンセサイザーが出た〉って聞いて。しかも〈ヴァージョン2〉はよりはっきり声らしくなってると。それにオートチューンをかけたらどうなるのかな?と思ったのがVOCALOIDを使いはじめた動機です。“Packaged”のテスト版は、ワンコーラスだけですけど4時間くらいで作って、歌詞も10〜15分くらいで出来ました」。

“Packaged”をニコニコ動画で発表したことと、初音ミクの爆発的な広がりを契機に、livetuneは急速にその名を上げていった。そんなふうにスタートしたキャリアを現時点で総括したのが、今回リリースの新作『Re:Dial』だ。

「タイトルの『Re:Dial』には〈能動的に過去の作品にアクセスする〉っていうコンセプトがあるんです。だからほとんどリファインしてます。5年前の楽曲もあるんで、気になるんですよ(笑)。このベースの処理はないな、とか。それから“D.E.N.P.A.”はイヴェントで使えるように、ビートを残して繋ぎやすいように作ってたんですけど、そういう曲じゃないなと前から思っていて。ビートレスでコードで終わるほうがエモーショナルだなと思って、今回はそういうふうに仕上げて〈Re:edit〉としました」。

そして今回の目玉は、書き下ろしの2曲“Redial”“Magnetic”。どちらも過去になかったパーソナルな楽曲になったという。

「ゼッドのリミックス(2012年作『Clarity』の日本盤に収録の“Spectrum”)とか、SEKAI NO OWARIのFukase君にヴォーカルをやってもらったり(4月より放映開始のTVアニメ『DEVIL SURVIVOR2 the ANIMATION』の主題歌)とか、最近はものすごく広いところに連れて行かれた感があって。まあ自分から行ってるんですけど(笑)。でも広すぎるので、自分の足元を確かめたいなっていう感覚が出てきたんです。“Tell Your World”も大きかった。あの曲の矛先はインターネットで、〈概念〉とのコラボレーションに近い。今回、新曲を作るということでVOCALOIDのソフトを久しぶりに触ったんですけど、あの曲の存在が影から忍び寄ってくるんですね。作ってるとどうしてもシリアスな方向にいっちゃう。新曲はやっぱり明るくいきたいから悩んじゃって。でもそのぶん、“Redial”には振り切れたキャッチーさがあると思います。“Magnetic”のほうは、ただ疲れてたんです(笑)。嬉しいことですが、制作に追い込まれていて、電車を見て〈どっか行きたいな〉って思いながら作った曲。自分の曲でこういう歌詞もあまりないですね」。

Fukaseとのコラボ然り、近作では中島愛やYun*chiら生身のシンガーを迎えてこれまでとは違った動きも見せているlivetune。さて今後は……!?

「ヴォーカリストだけじゃなくて、おもしろいことができるのであれば何でも採り入れたいと思ってます。エレクトロ・ハウスに固執しようとも思ってないし、楽器でゲストを迎えたりするのもアリだと思います。今回“Last Night, Good Night”では生弦を使ったりしたんですけど、やっぱり心を打ち抜くものがあるんですね。だから、そこは全然自由でいいかなと思ってます」。



▼関連盤を紹介。

左から、livetune feat.初音ミクの2008年作『Re:package』(ビクター)、2012年のミニ・アルバム『Tell Your World EP』、livetuneの2012年のシングル“Transfer”(共にトイズファクトリー)

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2013年04月17日 12:15

更新: 2013年04月17日 12:15

ソース: bounce 353号(2013年3月25日発行)

インタヴュー・文/南波一海

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